ニッサン・ティアナ 試乗レビュー
街中での印象は良好と言っても差し支えない。日産車のCVTは扱いやすいものが多いが、ティアナも比較的大きい排気量に助けられてか、街中のペースであればアクセルの踏み込み量に対してリニアに加速してくれるため、調整が難しいという印象はなかった。ボンネットが長く、見切りが良くないと感じることもあったが、慣れれば問題ないレベルだ。低速域ではハーシュネスが小さく、最新型のプラットフォームを採用している、カムリとほとんど同等と言っても良い快適さを誇っていた。それは、驚異的な水準であるということだ。エンジン音についてはかなり静かで、強くアクセルを踏み込まないとエンジン音が聞こえてこない。直列4気筒とは思えないレベルだ。ただ、アクセルペダルに振動が多少伝わってきてしまうのが気になった。
高速道路の合流など、一時的にフルスロットルにした場合の加速感は良いのだが、ワインディングを走っている時のようにアクセルのオンオフを繰り返していると、レスポンスが悪くなってくる。これはCVTの特性上仕方のないところかと思うし、この車がそう言った使われたかをあまり想定していないということを考えれば目を瞑った方が良いポイントかもしれない。エンジンの出力特性としては、日産らしい、フラットでクセがなく、比較的扱いやすいと言える。車好き、あるいはエンジン好きとしては、回転数の上昇とともに、ドラマチックに盛り上がる、フーガやフェアレディZのようなエンジン特性だともっと好きになれるところだが、やはりこれも車の使われ方を考えたら妥当なセッティングだと言える。
車がスピードを上げていっても、車内はずっと静かなままであることに驚かされた。高速道路走行車線の巡行レベルであれば、エンジン音は全く気にならないし、風の音も小さい。ロードノイズに関しても静かで優秀だと思うのだが、エコタイヤ特有のザラザラ感というか、ゴロゴロとしたノイズが耳に入ってきた。これを車の方でどうにかするには、さすがにコストがかかりすぎると思うので、自分ならこの車の特性に合わせ、レグノやルマンあたりの、コンフォートタイヤを履かせたいところ。ハーシュネスに関しては、流石に高速域では、プラットフォームが新しい、カムリと比較すると背中にドシッと一本貫くような揺れを感じることが多かった。サスペンションの剛性がいまひとつなのか、高速道路を走行していると、凹凸を通過した直後はタイヤがバタバタと落ち着かない。ボディも後ろ側がプルプルと震えており、今時のセダンとしては、もう少し全体的なかっちり感が大きくてもいいような気もする。
ワインディングロードに持ち込んだときは、ステアリングと、サスペンションの横剛性がもう少し欲しいという感想が率直なところだ。ハンドルの切り出しは少し甘めで、ソリッドさはあまりない。市街地での良好な乗り心地とのトレードオフだと思うが、ロール量も比較的多かった。カーブの途中でアンジュレーションを受け止めた際も、最近のセダンにしては接地感を失いやすく、ここもカムリと差がついてしまったところだ。フロントも重く感じるため、最近のセダンとしては回頭性が良いとは思わない。しかしながら、最近の日産の車にありがちな、スピードが上がってもハンドルが軽いままで、怖いと感じる印象はなく、適度にハンドルには手応えがある。SUVやミニバンと比較すると、当然ではあるが重心は低く、地を這って行くようなコーナリングとまでは言わないものの、優しくハンドルを切り返していれば、車もきちんと答えてくれる。要は、あまり飛ばしてはいけない車だということだ。ただ、それでも、シートのホールド感はもう少しあったほうが良い気もする。
日本の高速道路の走行車線を走る分には、何も問題はない。というか、このクラスの車で、時速100キロ程度で根を上げるはずもなく、前の車について行くことになんら苦はない。しかし追越車線のペースに合わせると、若干ながらハンドルが微振動を起こし、直進安定性は同クラスの車、例えばカムリやアテンザ、レガシイなどと比べると低い方である。高速域でのスタビリティ性能は、シャシーの設計の新しさがものをいうため、この項目であまり良い結果が残せなかったというのは、個人的には予想通りといったところだ。
車を返却する際、腰が痛いと感じたほか、右足の土踏まずあたりにも痛みを感じた。ドライビングポジションについては、じつは乗車時からあまり良い方ではないと思っていたが、やはり疲労の蓄積も多かったようだ。シートは硬さはちょうど良いのだが、背もたれの設計が二次元的で、先述した通り、カーブでのホールド感という意味においてももっと多面的に設計して欲しい。またペダルの配置においてもオルガン式を採用したカムリやアテンザに水をあけられてしまっている。右ハンドルの車ではなかなか設計的に難しいのか、あるいはコストのもんだいもあるのだろうが、ペダルの踏み間違いの防止という観点からもDセグメント以上では、オルガン式が当たり前だという時代にそろそろ突入しても良い頃ではないだろうか。
全体的には良くできていると思った。現行のDセグメントセダンの中ではもっとも安価な車で、基本設計は2013年、さらに日産はティアナの国内仕様のモデルチェンジにほとんど関心がないということなどを考えると、時代に取り残された乗り心地やドライバビリティなのかと予想していたのだが、街中を走ったり、郊外でもそこまで飛ばさないというのであれば、安楽で快適な移動空間が提供される。250万円台の本体価格で、ここまで存在感がある車というのも珍しい。アメリカ的価値観で、大味だと感じるところも正直あるが、合理的でコストパフォーマンスは非常に優れていると言っても良い。ただし、お金に余裕があるのなら、いまのところDセグメントのFFセダンでのベストバイはカムリであると言わざるを得ない。昨年の動画に遡って見ていただければわかると思うが、カムリの出来があまりにも良く、かなり感動ものだったため、ここに追いつくのはかなり難しいと思う。アメリカや中国では毎年のようにテコ入れが行われ、新エンジンが採用されるなど、話題に事欠かないアルティマやティアナだが、ここで日産が大人気なく、カムリに対抗して超ハイレベルなDセグメントセダンを日本に投入してくれたら、日本のセダン市場も活性化してくるのにと感じる。
給油量38.2L 走行距離486.7km 今回燃費12.7km/L
詳しい解説はこちらをご覧ください!
https://www.youtube.com/watch?v=jcpSfAQPz7g
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