BMW X1 18d 試乗レビュー










先代のX1はFRレイアウトであったにも関わらず、2015年に登場した現行のX1は、エンジン横置きのFFレイアウトをベースとしている。というと、なんだ、要はミニクロスオーバーと同じじゃないかというツッコミが来そうだ。実際、プラットフォームは共用しているようである。横置きエンジンとなった恩恵は室内空間に還元されており、運転席も助手席も足元は広く、もちろん後部座席も広々としている。3シリーズで感じた、車に乗り込んだ瞬間からのかっちり感は、確かに同クラスのSUVと比較すればあるのだが、他のBMWのセダンほどでは無い。ちなみに、BMWではSUVのことをSAV、つまりスポーツアクティビティビークルと呼称しており、背の高い車であってもBMWに求められているスポーティーさを体現できているということを主張しているのだが、めんどくさいのでこれ以降はSUVと呼ぶことにする。着座位置はSUVとしては低いのだが、BMWとしては高い。視界も良く、フロントの下側もよく見える。これも横置きレイアウトの賜物かもしれない。
エンジンを始動すると、ディーゼルらしいからからとした乾いたノイズが響いて来る。320dに乗ったときはなんて荒くれ者のエンジンなのかと思っていたが、X1に搭載される2リッター4気筒ディーゼルは、横置き用に、スペック的にも若干デチューンされているためか、振動も、音も動き方もマイルドだと感じた。3シリーズと比べて、重量が増加しているのに、エンジンスペックが下がっていることからも分かる通り加速は320dほどのパンチは無いが、市街地で青信号になった瞬間のダッシュは最高に気持ちが良い。なんだかんだいっても、SUVにはディーゼルエンジンがあっている。高回転でもディーゼルにしてはすっきり回るが、320dよりも息切れが早い感じも否めない。高速道路で追越車線に出るときなどは、市街地のイメージでスピードに乗ろうとしても、想像よりはグイグイ行けないと感じることもあった。ただ、日本の高速道路をおとなしく走る分には必要充分以上の性能があるし、なにより巡航しているときがとても安楽だ。トランスミッションである8速のトルクコンバータ式オートマチックは、およそ優秀であるといっても良い。マニュアルモードでの変速はスピーディーだし、マニュアルモードにしなくても、アクセルの踏み加減でシフトをコントロールできるので、大変にドライバビリティが高い。ダイレクト感も高く、デュアルクラッチのようにカチッと変速していく。気になったのは発進時や停車時の制御で、発進時にアクセルを少しだけ踏み込むと車が前後にギクシャクしてしまいがちで、停車時も比較的急制動で速度をゼロにした場合は良いのでだが、ゆっくりと減速した場合はなぜかギクシャクする。また、5キロ以下に減速し、再加速しようとしてもギクシャクするので、渋滞の時は正直フラストレーションが溜まる。高速域に照準を合わせた割り切ったトランスミッションなのかもしれない。日本車のCVTでも低速域に照準を合わせたものがあったりするので、ここら辺はヨーロッパの道路環境に合わせたものとしては正しいものなのかもしれない。それでもワインディングでは楽しめるし、高速道路ではドライバビリティが高いため、そちらを重視する人はこれで良いと感じることだろう。
ワインディングロードでは前輪の高いバイト感に助けられ、SUVとしては非常に高いハンドリング性能を見せてくれた。3シリーズと比べてしまったら、ヨー慣性モーメントは大きく、重心位置も高い上に、ピュアなFRレイアウトを持っているBMWのセダンたちと比べてしまったら楽しさ半減といった感覚は否めないがそれでもBMWらしいかっちり感と、それに伴う機械との一体感は存分に味わうことができる。ロールは出るが、車の背の高さから想像するほど出るわけでもなく、一体感も手伝って荷重移動もしっかり把握できる。ハンドルセンターはほんのちょっとだけ甘いが、まだ許容範囲。少しの操作に対しても車体がしっかりと反応する。かといってソリッド過ぎて疲れてしまうというわけでは無いのが、嬉しいところでもあり、私好みでもあるのだが、もしかしたらBMWらしくないのかなと思ったりもした。ただ、このソリッド過ぎないということが、高速域でのスタビリティにはよく効いているようで、高速道路でスピードを上げていっても、むしろ3シリーズよりも安定しているのでは無いかという安心感に包まれていた。高速でカーブを曲がっている最中に路面に凹凸があった場合は、サスペンションがよく動き、しっかりタイヤが路面に追従してくれる。およそ充分といえる性能だが、現行の国産車あるいは外国車のなかでは、もう少しきちんと、路面に吸い付くようなフィーリングを持っている車がある。路面が平らな場所なら、SUVとしては最高に楽しく、安定している部類になるのだが、あと一歩、路面に吸い付くというフィーリングが欲しいというのが正直なところ。
乗り心地は、BMWらしくちょっと固めで、引き締まっているという印象だ。路面から車体がつきあがったあと、ダルにピッチングが続いてしまったり、もちろんボディがブルブル震えるということもない。ヨーロッパ、特にもドイツの車の乗り味そのものといった感じで、好きな人にとっては馴染みが持てると思う。ロードノイズはドイツ車としては小さいが、風切音は100キロ程度でも大きいと感じた。

これほどアジリティが高く、ボディーもサスペンションもステアリングもガッチリとしたSUVは珍しい。ここに共感する人は是非ともX1を買うべきだし、エクステリアもいかにもBMW然としていて堂々たるものだ。X1という名前が示す通り、これはBMWSUVでは最も下のグレードなのだが、それでも全幅は1800ミリを超え、全長も4メーター半に迫る。BMWらしいSUVが欲しいというのなら満足できるだろう。ただ、本当にBMWらしいBMWは私にとってはFRセダン、特にも3シリーズだと思っている。見た目やブランド力ではない、BMWの思想や技術、ドライバビリティやハンドリングに惚れ込んでいるのならやはりFRのクーペや、セダンでなければ満足できないかもしれない。とはいっても、SUVの積載性やデザイン性を受け入れ、横置きエンジンを採用しつつも、しっかり世界観がBMWしているのだから大したものだ。

走行距離711.1km 給油量53.6L 今回燃費13.2km/L

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