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10月, 2018の投稿を表示しています

トヨタ・86 試乗レビュー

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この日本に、 FR のスポーツクーペが存在する。もうそれだけで、この車の存在価値は充分だ。とにかく低く低く構えたフォルムは走りの俊敏さを思わせる一方で、いわゆるラクシュリークーペのように大柄というわけでもなく、こぢんまりとした佇まいはかつてのライトウェイトピュアスポーツの世界観を思わせる。もっとも、車両価格や排気量、車両重量を考えたら、ライトウェイトスポーツよりはちょっとだけ大きめと言った方が良いかもしれない。マイナーチェンジを重ねるごとに、デザインの追加箇所が増加し、ラインや曲線が多くなったのは残念だと思う人もいるかもしれないが、空力を向上させ、技術を次世代に伝承するためにも、仕方ないと言える点かもしれない。乗り込んで感じるのは、 FR で縦置とはいえ、水平対向エンジンが搭載されている割りには、ボンネットが長く感じると言うことだ。着座位置が低く、囲まれ感が強い、レーシーな雰囲気であるため、初めて乗る場合は目線感覚や視界などで不便を感じるかもしれないが、個人的にはすぐになれるレベルだと感じた。ただ、後方の視認性は悪いので、バックカメラは必須だろう。内装はそれほどクオリティが高いとはいえないし、デザインも子供っぽいが、車両価格やコンセプト、軽量化を考えれば、これくらいで良いのかもしれない。エンジンは市街地でも扱いやすい。トヨタと共同開発された2リッター直噴水平対向エンジンは、信号待ちからの発進加速や合流では、充分以上の性能を見せてくれた。低回転でもモリモリ湧き上がるトルクがある、というわけではないが 1000 回転あたりから加速しようとするときでもググッと背中を押される感覚がある。エンジン音も巡航中だと、ピュアスポーツとは思えないくらい静かだ。6速オートマチックは、発進時に少しだけ急激にトルクを伝えてきてしまう傾向があるが、注意していれば特に問題はない。ワインディングロードにこの車を持っていくと、ああ、やっぱりこの車は日本の峠を走るための車なんだなと思い知らされる。ステアリングからのインフォメーションが非常に的確で、カーブでは機敏そのものというよりも、折り目正しくラインをなぞっていくという感覚だ。ステアリングの剛性感はとても良好で、路面状況も手に取るようにわかる。シャシーの剛性は正直そこまで

レクサスIS F SPORT 試乗レビュー

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スピンドルグリルによる威圧感、上下に分かれたライト、エッジの効いたサイドのプレスラインなど、とにかく足し算のデザインをしまくりな車だと言うのが第一印象ではあった。足し算デザインが全てダメだというつもりはないし、実にレクサスらしいと言えばその通りなのだが、個人的にはかなりケバい印象を受けてしまった。車に乗り込むと、着座位置が低いことに気づくと思う。 BMW の3シリーズのように、乗った瞬間にびっくりしてしまうほど低いというわけではないが、目線感覚はスポーツセダンそのものといった感じだ。かといって視界が悪いわけでもなく、左右方向は見やすいし、縦置きエンジン車ながら前側の死角もそれほど多くない。当初の印象はスポーティーだと思わせながらも、実にトヨタ設計らしい、親しみやすさをよく感じる着座感覚がある。ソフトパッドやステッチが多く配置されたインテリアは、レクサスらしい質感の高さを感じた。レクサスの車の中には、トヨタの車をベースとしたものもいくつかあるのだが、わざわざトヨタ版ではなく、レクサスのものを買う理由は、主に内装の質感の違いによるという人が多いような気がする。ラクシュリーというよりは、スポーツ寄りであるこの車の性格を考えると、豪華装備よりも軽量化を優先すべきだと考える人もいるかもしれないが、私はむしろ機能性や質感を落とすことはなるべくせずに、スポーツカー的な世界観を持たせてある IS のインテリアは、プレミアムスポーツとでもいうような実に現代的な価値観に即していると思う。 車に乗る前に、私は乗り心地やハンドリングについては満足できないものなのだろうなと、勝手に想像していた。理由としては、この IS は年次改良を受けているとは言え、三代目 IS の登場は 2013 年で、日進月歩のシャシー製造技術を考えると、すでに基本設計は古い部類に属していると言わざるを得ない。トヨタの車は、 TNGA を採用した新世代車両に関しては乗り心地、ドライバビリティ共に満足のいくものが多くなってきてはいるものの、それ以前の車については、はっきり言って運転して楽しいと感じるものはそれほどない。先代のクラウンや、マーク X のような FR セダンも、独自の世界観があるとは思うものの、車との一体感や快適性を高次元で両立できてい

三菱・ミラージュ 試乗レビュー

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ランサーにパジェロ、デリカにエクリプス、三菱がこれまで育て上げてきた車は、もはやどれもブランドであるといっても良い。80年代から90年代、 1.6 リッタークラスの王者の座をかけて、シビック、レビン、パルサーといった、スポーティーなコンパクトカーがしのぎを削っていた中、マイベックエンジンを搭載し、絶対王者シビックへ、勇猛果敢に挑み続けるミラージュの姿は、多くの車好きを熱狂させたことだろう。その時の様子は、昔のベストモータリングの動画でも見ていただければよくわかるので、解説はそちらにお譲りするとして、今回乗車したこの6代目ミラージュはタイランドで生産されるエコロジーでエコノミーな車という位置付けだ。ご存知の通り、現在の三菱にはスバルの WRX と意地の張り合いをするスピリットもなければ、 VTEC エンジンに果たし状を突きつけるようなバイタリティも感じられない。かろうじて残された、4輪駆動の高い技術力と、プラグインハイブリッドの開発、そして日産への OEM 供給網によって、なんとか市場に踏みとどまっているというのが日本から見る三菱自動車の姿ではある。しかしながらこのミラージュを見ていると、世界に目を向けたもう一つの三菱の姿が浮かんでくる。低価格車による世界戦略だ。タイランドで製造され、日本やアメリカ合衆国を含む、世界90カ国以上に輸出されるミラージュは、アメリカで、2年連続ベストエコノミーパフォーマンスカーに選定されている。つまり、購入費用から維持費用までを含めたコストが、アメリカで最も低い車であるということらしい。アメリカという国は、自動車に対して目の肥えたユーザーが多かったり、際限のない販売奨励金戦争や激安中古車の流通網が強いということもあって、トヨタがサイオンブランドを廃止したように、低価格ブランドというものが定着しづらい国なのだが、それにもかかわらず三菱はミラージュという低価格車によって継続的に利益を生み出し続けている。前置きが長くなったが、そのミラージュを日本で所有するということついて、検討していきたいと思う。車両価格は下位グレードで消費税込みの本体価格が約 138 万円。一方で、トヨタのヴィッツは、排気量が1リッターだと、 118 万円から購入でき、ミラージュでは標準装備の、プリクサッシュセーフテ