日産・新型リーフ 試乗レビュー








加速感については、電気自動車を所有するという意義を最も感じられるポイントであろう。初代のリーフも発進時の加速は強烈であったが、高速域になるとモーターの特性上、どうしても伸びが悪いと感じてしまったのだが、今回のリーフは、最高出力が150馬力に向上したためか、追い越し加速や高速道路の上り坂などでも、全くと言っていいほど不満が出なかった。最高速度で言えば、流石に内燃機関搭載車にはかなわないとは思うのだが、日本の道路であればもう十分だと言える性能になった。トランスミッションがなく、モーターと車輪が直結しているため、アクセルレスポンスが非常によく、内燃機関にはとうてい実現できないダイレクト感を生み出せているというのは、初代のリーフと同じ点である。私は、マニュアルトランスミッションの車も好きだが、車との一体感を味わえるという点においては、電気自動車のドライブフィールもとても気に入っている。むしろツーペダルの車であれば、電気自動車のほうがドライバビリティが高いとすら感じているため、実は電気自動車の普及については、車好きとしてそこまで悲観しているわけではない。出来の悪いCVTやステップATが駆逐されるのなら、むしろ電動化してしまった方が良いきもしてしまう。それくらい、電気自動車の加速感は病みつきになる程すばらしい。
ハンドリングについては、先代に乗った時は、率直にレベルが高いと感じていた。今回のモデルも、前後の重量配分がよく、ヨー慣性モーメントも小さい上に、重心も低いため、コーナーを曲がっていくのが楽しいと言って差し支えはない。ハンドルの操作レスポンスも悪くないし、ステアリングには剛性感もある。しかし、プラットフォームが先代を踏襲しているためか、シャシーやボディーの剛性に不足を感じることが多く、サスペンションの剛性ももう一歩である。日産の大衆車では毎回言っているが、ハンドルも軽すぎるし、高速域になっても重くならないので怖いと感じてしまう。路面が平らな場所では良いのだが、高速域で凹凸のあるコーナーを曲がっていくと、怖いとまでは言わないまでも、舵角の修正を多く行わなければならなくなってしまう。ただ、バイト感についてはタイヤが改善されたためか、初代よりもしっかりと路面を捉え続け、安心感は強くなったといえる。ハンドリングを総合的に言えば、初代と比較して大きな進化は認められなかった。初代に乗った時は優秀なハンドリングだと感じたものだが、今やCセグメントハッチバックは非常にレベルが高いものが増えているため、今となっては相対的にはとりたててレベルが高いと言えるわけではないかもしれない。
乗り心地については、良いと感じる人が多いのではないかと思う。まずもってありとあらゆるものが静粛そのものである。電気モーターはアクセルを踏み込むと、モスキート音のような高音が若干耳に入ってくるが、不快さはほとんどない。ロードノイズも非常に低いレベルで、新しいアスファルト舗装を時速60キロ以下で走行するのなら、全く無音と言っても良い。風切り音は雨よけから聞こえてくるという程度なので、もし私が買うのなら雨よけは装着せず、高級サルーンのような静粛性を楽しむだろうと思う。トランスミッションが存在しないため、加速がシームレスであるという点も、感覚的に乗り心地が良いと感じさせる要因になるだろう。しかし、ハーシュネスは比較的大きい上に大きな突き上げを受け止めた後は、床がブルブルと震えていた。その傾向は特に後ろ側で顕著であったため、後部座席に乗車しているときは正直にいうとあまり快適とは言えなかった。都会ではリーフのタクシーを時々見かける上に、ヨーロッパでも徐々にリーフをタクシーとして採用する動きが出てきているらしいので、後部の快適性の向上は、もしかしたらそろそろ取り組まなければならない課題かもしれない。
直進安定性については重心の低さから、地を這っていくような安定感があり、優秀だと感じた。初代も優秀だったので、それを引き継いだのかとおもうが、高速になった時にハンドルを重くするようにセッティングするなどの細かい工夫は必要になるのではないかと感じた。
日産が自動運転システムと謳う、プロパイロットについては、確かに高速道路ではハンドルのアシストがされ、運転の支援はされている気がするのだが、テレビCMで言われているように、スイッチ一つで自動運転というわけではなく、実際にはプロパイロットのボタンを押した後、あっちやこっちのレバーを引いたりボタンで調整したりという操作が必要になる。また、ハンドル操作には不安があり、対面通行の高速道路では中央に流されがちになってしまったし、カメラのダイナミックレンジが狭いためか、トンネルの出入り口では突然プロパイロットが解除されることもあった。個人的には、まだまだこの手の自動運転に自分の命を任せる気にはなれない。
今回のリーフから搭載されたイーペダルについては、ノートe-POWERで感じた通り、街中では非常に使いやすいと感じた。ノートよりも制動力が大きく、アクセルの操作はシビアになりがちなため、流れの良い道路や、高速道路などではむしろ通常のモードの方が扱いやすいと感じたが、電気自動車がメインで使用されるであろう市街地ではこんなに楽なことはない。ある程度先を見越していれば、足の移動は全くなくなるし、スムーズに減速できるため乗り心地の改善にもつながる。ただ、いざブレーキを踏んだ時は、ペダルがやたらと重かったり、効き具合が操作に対して一定でなかったりなど、回生ブレーキとディスクブレーキの協調制御には改善の余地がありそうだ。また、ハンドルを大きく切った状態で、アクセルを離してもなかなか停車してくれないこともあるなど、細かいところでの制御を煮詰めてほしい。
最後になったが、多くの人にとって最も気になるであろうことが充電、あるいは航続距離のことであろう。公称値では満充電で400キロを走行できるということになってはいるが、大方の予想通り、この数値を達成することはほとんど不可能だ。幹線国道を、私の運転の仕方だと、およそ270キロというあたりがよいところで、加減速を繰り返す市街地では航続距離が減少するのは当然のこととして、電気自動車の特性上、どうしても高速になればなるほど電力消費が多くなる。高速道路を走ると、200キロ走れば良いところで、エアコンをつけるとさらに2割程度航続距離が縮む。そこまでは予想できたことなのだが、個人的に辛かったのは、1度でも急速充電を行ってしまうと、バッテリーの温度が上昇するためか、次の充電は非常に時間がかかるようになってしまうということであった。公称値では40分で80パーセントの充電ができるとのことだが、それができるのは1日に一回までだ。したがって、現状ではやはりまだ用途に限りがあると思われる。外国の話をしてもしょうがないが、アウトバーンで連続2時間走らせることは不可能だし、日本の高速道路でも厳しいと感じる。そういった用途に電気自動車を投入するのであれば、バッテリーの圧倒的なブレイクスルーが必要で、現状であれば全固体電池の登場を待つしかないのではないかと思う。ただ、もちろん一般道では初代のリーフよりも圧倒的に航続距離が増えており、県境越えなどでも不安を感じることはなかった。街中でだけ使うというのであれば、もうなんの問題もないと言ってもいいレベルまでは進化した。あとはリチウムイオン電池の性能が低下する、寒冷地での使用はできれば避けたほうが良いかもしれない。

現状、混雑した市街地をメインに走るというのであれば、リーフ以上の選択肢はない。ワンペダルドライブのため運転は非常に楽だし、加減速性能に優れるモーターのおかげでキビキビ走ることもでき、なにより一度導入して仕舞えば、その後にかかるコストは非常に少なくて済む。リーフの購入を検討している人がいれば、用途や使い方次第では自信を持ってオススメすることもできる。車としてみても、低重心や重量バランスの良さ、そしてなによりアクセルレスポンスの良さによって、一体感を味わいながら走らせることができるため、運転が非常に楽しいと感じる人が多いように感じる。個人的には、全体的に先代のキャリーオーバー感が否めず、フルモデルチェンジというよりも、ビッグマイナーチェンジに近いのではないかと思ってしまったのだが、それでも電気自動車の楽しさを味わうには充分な性能と言える。日産は、月額二千円でディーラーにて充電し放題のプランを用意しているが、もし私がリーフを買うのなら、急速充電によるバッテリーの劣化を嫌ったり、そもそもリーフで遠出をすることはそれほどないと思うので、自宅に200ボルトの普通充電設備をつくり、基本的には自宅の電気でまかない、少し遠出をした時に540円を支払ってディーラーで充電することになると思う。国内の充電設備は、道の駅やサービスエリアなど、数自体は多くなってきているものの、事前に予約や登録が必要だったり、時間が限定されていたりと、使い勝手が悪いものが非常に多い。たとえば日産の2000円の充電し放題プランに、いくらか金額をプラスすることで、道の駅やサービスエリア、あるいは他のディーラーなどでも充電できるようになれば、もっと遠くまで、自由に移動することができるようになるのにと思ってしまう。
バッテリーの性能がぐんぐん向上し、再生可能エネルギーの価格も減少し続けている現状で、いずれはほとんどの車が電動化されるのだろうと感じる。リーフは次のスタンダードを作ることができるかどうかは、日産グループが真摯にこの車を進化させていけるかどうかにかかっているだろう。この全く新しいドライブフィールをより多くの人に届け、電気自動車って楽しいと思ってくれる人が増えれば、自動車の未来を変えることができるのだろう。


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