スバル・フォレスター 試乗レビュー








エンジンは先代のインプレッサと同じで、車両重量1.5トンを超える車を、150馬力で動かすのは、なかなか酷では無いのかと予想していたのだが、いざ乗ってみると思ったよりも出足が速かった。街乗りではほとんどの人は不満を持たないだろうと思う。スバルのエンジンらしく、高回転まできっちりと回る高速型のエンジンで、SUVながらスポーツカーさながらに高回転を維持して駆け抜けていくことが気持ち良い。ただ、個人的な意見を言えば、もう少しSUVらしいトルクの太さも見せて欲しかった。峠道を走っていると、ギアレシオが合わないカーブでは立ち上がりにもたつくことがあるし、高速道路の上り坂ではエンジンをかなり唸らせる必要もある。無骨で筋肉質な見た目から想像できるような肉厚さをエンジン性能からも感じたかったところだ。動力性能に不満がある人は、当然ながら、280馬力を発生するターボ付きのモデルを購入すれば良い話だが、北米仕様のラインナップである2.5リッター自然吸気、2リッターターボ、そして2リッターディーゼルという3本立てのラインナップがもっともバランスが取れているように感じる一方で、日本のモデル展開だと、ターボ付きと自然吸気とで、パフォーマンスに差がありすぎるようにも感じてしまうし、自然吸気はワンクラス下のXVともキャラクターが被ってしまっている。すでに北米で発表されている新型フォレスターは、とりあえずは2.5リッターの自然吸気のみが販売されるようだが、今後どのようなパワートレインが追加されるのか、日本仕様はどのエンジンが搭載されるのか、興味は尽きない。エンジンの振動は、スバルの車にしては珍しいくらい、フロアにプルプルと伝わってきた。エンジン自体の性能というよりも、シャシーの性能が相対的に時代遅れになってきているのかもしれない。エンジン音については、最近のスバルらしく、低回転域や、巡行レベルであればほとんど聞こえないものの、比較的強目に加速したときは、ポロポロという水平対向エンジン特有の音が聞こえてくる。音質は悪く無いので不快な感じは全くしない。
トランスミッションはスバルの車ではおなじみの、リニアトロニックと呼ばれるCVTだ。より設計が新しいインプレッサなどでは、パドルシフトによって変速した際、かっちりとしていて、スパスパと変速が決まるのだが、こちらも設計が古いためか、変速は反応が鈍く、ギアが変わるときももっさりした感覚は否めない。実はフォレスターに乗ったのは初めてではなく、この4代目のモデルが出た直後に試乗したこともあったのだが、そのときはCVTなのにギアチェンジが楽しく、鋭い反応を示すなと感じていたのだが、自分の中で時の経過とともに要求水準が上がっていってしまったようだ。出だしでもたつくことは少ないが、その反面低速域でのアクセルコントロールは難しいと感じた。それでも、世の中に出回っている大半のCVTよりはラバーバンドフィーリングが少なく、ドライビングを楽しめるトランスミッションであるといえる。ただそれは、あくまでも無段変速機の中ではといった話であって、最近めきめきとレベルを上げているトルクコンバータ式のステップATや、デュアルクラッチ式と比べると、ドライバビリティはどうしても薄い。シームレスな加速を好む人も多いとは思うが、内燃機関の良さをまだ味わえるいまだからこそ、ステップATの搭載や、マニュアルの存続を願っていたのだが、新型をみる限り、その願いは届いていないようで残念だ。
アイドリングストップについては、最近の軽自動車のように、まだ走っているうちからエンジンを切ってしまうのではなく、停車中にブレーキを踏み込むとエンジンが停止する、スバルではおなじみのものだ。停止時は特に衝撃も揺れも起こらないのだが、再始動時は車がすこし左右に揺れる。始動速度は早いのだが、どうしても現行のインプレッサなどと比較すると、荒削りな感じがする。これもやはり設計の古さが災いしているのかもしれないし、4代目フォレスター登場時はこれでもかなり優秀なアイドリングストップ機構であった。
ハンドリングについては、背の高いSUVということを意識させないような自然さがあった一方で、SUVらしい雄大さや、少しのルーズさ感じる場合も何度かあった。ハンドルは中心から左右に3度くらいのところまでのフィーリングが曖昧で、緩やかなカーブでは少し気を使ってしまった。きついカーブでは重心の低さを生かして、鼻先をカーブの内側に突っ込ませることも可能ではあるし、SUVとしてみれば上出来なサスペンションやボディーの剛性を保っていると思う。ただ、当たり前と言えば当たり前だが、レヴォーグやインプレッサなど、より背の低い車と比べるとあまり大胆なことはできない。なんども切り返すようなタイトコーナーが連続する場面では、後ろ側のシャシーがグネグネと動いていることが感じ取れるし、ロールも多少起こる。スバルはスポーティーなSUVを得意としているメーカーではあるし、フォレスターもSUVとしてはかなりキビキビと走れる部類の車ではあるが、他社のSUVもどんどんとスポーティー志向になっている昨今、それらに対抗する存在はどちらかといえばXVのほうで、フォレスターはもう少し硬派で、走破性に重きをおいたモデルへと変わりつつあるような気がする。シャシー剛性についてはSGPを採用した次期グレードでは間違いなく強化されるはずなので、どのような走り味になるのか気になるところである。
乗り心地については、ターボモデルを以前試乗した際、突き上げが比較的大きいと感じていたものの、自然吸気はそこまできつい突き上げを感じなかった。特にも細かい振動の吸収は非常にうまく、サスペンションがいい仕事をしてくれているのがわかる。一方で大きな突き上げについてはドシッとくる場合があり、フロアもしばらく振動してしまっていた。乗車した車は、まだ走行距離が2000キロに達していなかったため、足回りが十分に馴染んでいないという可能性もあるが、やはり現状のシャシーではどんなに頑張って改良しても、これくらいが限界なのだろうなと感じる。以前アップした動画でも申し上げている通り、SGPを採用した車は乗り心地が劇的によくなっているため、これも次期モデルには期待できそうだ。
スタビリティについては、やはりまだその輝きを失っていない。速度が上がるごとにハンドルの手応えはしっかりしてくるし、強風が吹き荒れても、水たまりがあってもびくともしない。気象や路面の条件が悪くなればなるほど、スバルの車に乗っていてよかったと感じるものだ。特にもスバルの中でもっともヘビーデューティー向けと言っても良いフォレスターは、本物のSUVとしての威厳を放っている。

個人的な感想としては、もし、自然吸気しか考えていないというのであれば、急いで4代目を買うよりも、もう少し待って新型を選んだ方が良い気がする。SGPを採用したインプレッサやXVのドライバビリティや乗り心地、スタビリティは他のモデルとは段違いで、これがフォレスターにも採用されたのなら、現状でもSUVとしてレベルの高いフォレスターが、さらに良いものになることは請け負いである。4代目フォレスターが登場したての頃、試乗した私は、SUVでもここまでスポーティーに、そして高い剛性を保つことができるということに感動したものだが、今は要求水準が上がってしまったため、当時は気にならなかったシャシー剛性やハンドルセンターなどが気になり始めてしまった。しかしながら、新型は若干ながら大型化する上、デザインも多少変化する。特にもリアのデザインは賛否両論が分かれそうなところで、それらが嫌だという人は駆け込みで4代目を購入することになるだろう。多少設計が古くとも、フォレスターの持つデザインの無骨さや、雄大な走りを楽しむには充分であるし、新型を街で見かけて、嫉妬しないという自信があるのであれば、それも悪い選択では無い。

走行距離443.7km 給油量34.5L 今回燃費12.9km/L

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