マツダ・タイタン 試乗レビュー









シートの出来が良い。トラックにしてはホールド感があり、座面も分厚い。長時間座っていてもお尻が痛くならなかった。また、オルガン式のアクセルペダルも、現代のトラックには珍しいもので、足首やかかとへの負担が小さく、アクセル開度の調整もしやすい。
私自身は気づかなかったのだが、トラックやバス好きの後輩から言わせると、ワイパーのレバーを手前に引いて、排気ブレーキをかける操作は、他のトラックとの操作の互換性上おかしいとのこと。こういった操作系の不統一さは、大きなシェアを占める大型車専門メーカーとの差が生じてしまう点で、残念だと言っていた。

エンジンはいすゞ製直列4気筒で、始動時はトラックなので当然ながら振動や音が大きく、車が一瞬右回転するような動きがみられる。しかし、いったん走り出してしまえば 振動は極めて小さく、ノッキングさせない限りはエンジンの存在を意識させない。エンジン音も、チョークを回したときや、冷間始動直後以外であればそれほど気にならず、拍子抜けしてしまったほど。10年以上前の型落ちの車ですらこうなので、トラックイコールガラガラとうるさいというイメージはもうほとんど捨ててしまってもいいかもしれない。労働者の快適性を技術で保つという姿勢は実に現代的で素晴らしい。性能的には申し分ない。空転さえ引き起こさなければ、多少積載していても信号が青になった瞬間に交通に置いて行かれることもなければ、高速道路での巡航も充分可能なくらいのエンジン性能は備えている。ディーゼルエンジンなので当然ではあるが、低回転からトルキーだ。3千回転以降の伸び感がもう少しあれば、追い越し加速などはもう少し楽だとは感じるところ。
トランスミッションの5MTに関しては当然ながら、乗用車よりもストロークが長く、変速スピードもゆっくり行う必要がある。スポーツカーのシフトに慣れてしまっている私は、左手を素早く動かしてしまう癖がどうしても抜け切れず、交差点で左折する際のシフトダウンで、ギクシャクしてしまうことがあった。教習所ではシフトノブの操作は素早く行うようにと教わったのだが、トラックに関しては勝手が違うと認識する必要がある。しかしながら、シフトノブの節度感は、ギアがどこに入っているのか行方不明になってしまうほど悪いわけではなく、実用上は特に問題を感じなかったため、覚悟していたほどフィーリングが悪いとは感じなかった。また、エンジンの豊かな低回転トルクにも助けられ、クラッチのミートは、スポーツカーなどと比べてもとても簡単だった。ただし、エンジンの性能に対してクラッチの強度が不足気味で、特にも切り返しを行っているときなど連続で負荷をかけているような場面では、クラッチが完全に滑ってしまうこともあった。今回はそこまでたくさん荷物を積んだわけではなかったのだが、これがもし最大積載量ぎりぎりまで積んでいると考えたら、すこし怖いかもしれない。また、これも、私自身は気づかなかったことなのだが、シフトパターンが乗用車の5MTのように、右下にリバースがあるというのが気に入らないと後輩が言っていた。たしかに、1速は超低速ギアであるため、基本的には2速発進となるトラックにおいて、2速と3速が別の列にあると、ほんの少しではあるが手間が多く、加速も遅くなってしまう。こういったところも、トラックやバス専門メーカーとの違いが表れているのかもしれない。
ロードノイズや風きり音は意外や意外、ほとんど気にならなかった。特にも風きり音については高速道路を走行してもほとんど気にならなかった。いかにも空気抵抗が大きそうな、キャブオーバの全面形状にもかかわらず、これはすごいと感心した。ハイエースやキャラバンよりも少ないし、軽自動車の風きり音はこの車よりも大体大きい。基本コンポーネンツはいすゞ製だが、外装を設計したマツダの本気がうかがえる。
一方で路面からの突き上げに関しては非常に大きいと感じた。特にも高速走行中の路面からの突き上げは、軽トラックに乗っているように突き返される上に、シャシーのたわみから生じるものと思われる前後のギクシャク感も多く発生していた。軽トラと違って、座席の作りが良いため、それほど悲惨なことにはならないのだが、現代のトラックはもう少し乗り心地が良いと感じる。ある程度多めの荷物を積載したときに、安定するような設計をしているのかもしれない。
ハンドリングに関しては、乗用車とは比較できるわけもなく、また私自身が他のトラックのそれを知らないため、単純に申し上げることはできない。それでもあえて言うのなら、ハンドルはタイムラグが大きいうえに、剛性が低いため、カーブの途中で非常に不自然な動きが出るため、切り角の修正は常に必要で、カーブで気を抜くことは許されない。急なカーブでは内側の後輪が空転し、コーナーの立ち上がりに大きな影響が出てしまう。もちろんそれは、荷物を積載したり、耐久性を出すためには仕方ない点もあると考えられるので、ここらへんは現行の小型トラックがどれほどの出来になっているのかがとても気になるところ。
高速域でのスタビリティはこれも比較対象がないところではあるが、一般道を時速60キロで走っていても、慣れないうちはスピード感があり、怖いと感じた。前輪の接地感はよく感じるものの、後輪は、それほど荷物を積んでいない状態だと、ダブルタイヤとは思えない設置感の無さで、道路のつなぎ目を乗り越えたら、どこかへ飛んで行ってしまうのではないかというほど。高速道路では細心の注意を払わなければならない。

高速道路において、貨物車両の法定速度が80キロに制限されていることについて、今までは疑問に思っていたのだが、今回このトラックに乗ってみて、確かに箱型の車と比較して高速域での危険性は高いものだと感じた。以前車載車に乗った時も感じたが、改めてトラックドライバーの方々へ感謝と尊敬の気持ちを抱くようになった。それと同時に、やはりこのような車の運転はとても楽しいと感じた。軽トラックよりもトルクがあり、力強いものの、やはり普段乗る乗用車とは全く違った感覚があり、車好きならばこの感覚は楽しめるだろう。今後は機会があれば現行の小型トラックとも比較して、走りや使い勝手などで大きな違いがあるのかを検証していきたい。

走行距離350km 給油量42.3L  今回燃費8.3km/L

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