スバル・エクシーガクロスオーバー7 試乗レビュー
エンジンはやはりスバル。低回転でのトルク感はもう少し欲しいが、高回転まで回した時の気持ち良さは一級品。自然吸気なので当然だがレヴォーグのようなターボラグは一切感じず、自然吸気の水平対向エンジン特有の気持ち良さを、3列シート車でも存分に感じることができるというだけで、この車を買う価値はある。レガシィなどに乗った時も思っていたが、スバルの2.5リッター自然吸気エンジンは本当に好きなエンジンのひとつだ。水平対抗なので当然振動は少ないが、音の侵入はレガシイよりも多い。一見してわかるように、ダッシュボードが薄く、フロント部分のスペースが短いので、吸音等の対策があまりできていないのかもしれない。
トランスミッションはリニアトロニックなので、たしかにCVTの割にはダイレクト感があり、パドルシフトも操作していて楽しく、かつ便利なのだが、最近のモデルのリニアトロニックと比べると、どうしても変速時の節度感がない気がする。パドルを操作しても、だらっと回転数が上下する感じで、ショックはないのだが、楽しさを考えるとまだまだといったところ。出だしはスームーズで乗り心地は良く、ストップアンドゴーの多い街中で扱う時は、トルコン式やデュアルクラッチと比べても扱いやすい。
スバルのCVTに乗るとほとんどいつも感じていた、CVTのベルトノイズは高回転でエンジンブレーキを使用している時以外はあまり感じなかった。
ハンドリングに関してはレベルは高いと言っていいのか、低いと言っていいのか、評価が非常に分かれるところだと思うので、難しい。3列シートで、かつ最低地上高を高めてある、クロスオーバー車だということを考えれば、レベルは非常に高い。ハンドルの動作に対して、比較的正確に車が向きを変えてくれる上に、ロールもそこまで不自然ではないため、全高や全長を考えたら、キビキビ感は高いと言える。近年流行の、トール系ミニバンと比較したら、気持ちのいいハンドリングが実現されているというのは当然として、マツダのプレマシーや、トヨタのウィッシュあたりと比較しても遜色がない。ただ一方で、同じスバルのSUVは、より重心が低く、乗り心地やハンドリングの気持ち良さを両立しており、特にもスバルグローバルプラットフォームを採用している、XVあたりだと、かなり自然なコーナリングを実現しているため、それらと比較してしまうと、どうしても設計の古さや、不自然さを否定することはできない。例えば、元となったエクシーガよりも、ハンドルの初期の応答性が低く、路面から伝わってくる手応えが足りない。なめらかな路面であれば良いのだが、コーナーの途中で路面が荒れた場合などは、シャシーの真ん中あたりがよじれ、車輪の設置性に大きな影響を与えている。電動パワステのセティングに定評のあるスバルだが、その設定にも古さを感じてしまう。
スタビリティに関しても同様で、確かに高速域での安定感は、3列シートの車であるということを忘れてしまうほどには高い。しかしながら、スバルの他の車の直進安定性の高さを考えれば、新車のスバルの中ではまだ甘いと言わざるを得ない。4輪の接地感はあるものの、手応えとして伝わってくるほどではなくもう少し情報が欲しいと感じる。
ロードノイズは大きくはないが、やはりレヴォーグなどと比較すると空気が共振しているような、耳がこそばゆいような感覚がある。ステーションワゴンタイプのボディーで、かつ、ルームミラーを見る限り、3列目のシートがブルブルと震えていることがあったため、内装部品の点数の多さも、その要因といえるかもしれない。ただ、タイヤが優秀なためか、ゴロゴロ感は極めて少なく、トール系ミニバンと比較しても、プレミアムな雰囲気が漂っている。
ハーシュネスに関しては、最近のスバルらしく、サスペンションが優秀で、衝撃をよく吸収している。シートも最近のスバルらしく、大きくてかつ包まれ感がある。今回はスケジュールが、体力的に厳しかったということもあり、助手席に移動した瞬間から深い眠りに落ちてしまったのだが、目覚めが非常にスッキリしているほど快適だった。しかしながら、欲を言えばさらにボディーやシャシーの剛性が高ければ、大きな衝撃を乗り越えた後の、ボディーの振動が抑えられると思う。
近年、ミニバン、3列シートといえば、セレナやノア、ステップワゴンといったトール系が一番人気だ。休日の地方都市の国道は、イオンの駐車場に入ろうとするトールミニバンで大渋滞している。トール系はスペースコンシャスで開放感があり、スライドドアなので乗り降りがしやすく、高齢者や小さな子供、ペットを乗せる時などにはとても役に立つ。一方で、構造上、どうしても重心が高く、剛性は低いため、特に2列目では床がばたついていたりと、乗り心地が悪く、ドライバビリティーも低い車が多い。家族構成や経済的な事情で、3列シートの車を購入しなければならないという人は日本にたくさんいるわけだが、走りを諦めたくないという人や、乗り心地にもうるさいと自覚している人は、クロスオーバーセブンを購入するというのは良い選択だと思う。一方で、設計が古いということもあってか、それでも剛性が足りないと感じる部分があったり、内装もどこかちぐはぐしていて、バランスが良くないという感じがした。今スバルは、3列シートのSUVのコンセプトカーを発表しているが、これを日本に導入するにはサイズが大きすぎる。マツダのように、日本国内向けの3列シートSUVを投入する体力が、より資本力の小さいスバルに可能なのかは甚だ疑問。現状ではスバル的な走りを感じさせてくれる3列シートとして貴重な存在ではある、ただ、スバルが、特に国内市場において、今後も3列シートを投入し続けることができるのか、少し不安になってしまう試乗になった。
走行距離521.3km 給油量36.9L 今回燃費14.1km/L
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