ダイハツ・ハイゼットトラック 試乗レビュー











エンジンはダイハツ製らしく、低回転域でのトルク感が大きい。軽量な車体を引っ張っていくには十分なトルクを持っているが、高回転域での伸びは、他のダイハツ製乗用車と比較してもあまりよくない。高回転の伸びよりも、エンジンの耐久性や、低速時の使い勝手を重要視すべき車であるということを考えれば、妥当なセッティングだと言えるかもしれない。とはいえ、一般道を走行するレベルであれば充分といえるパワーがあるし、高速道路でも勇気があれば、周りについていく走りをすることはできる。全体的なパワー感は、スペック表で優っているスズキのキャリイよりも上のような感じがする。エンジンの振動はほとんど伝わってこず、エンジン音は巡行レベルであればとても小さく、ほとんど耳に届かない。加速した時や、回転数を上げた時は、さすがに軽トラックらしい、突き抜けるようなエンジン音が聞こえてくるが、それでも一昔前の軽トラックのレベルから考えると、驚異的なレベルの静粛性であるといえる。ただ、スズキのキャリイは、ロードノイズ、風切り音含め、これよりもさらに静かだった。
トランスミッションは5速のMTで、さすがにアルトワークスや、ロードスターほどではないが、シフトには節度感がある。気持ちがいいとまでは言わないが、少なくとも、自分の希望と異なるギアに入ることはない。減速時にシフトダウンする際は、多少入りが渋いこともあったが、とても乗用車的な、使いやすいシフトだ。クラッチは比較的軽めで、ミートポイントが高く、最初の数回は操作に手間取ったが、すぐに慣れた。ペダル配置的にヒーリアンドトゥがとてもやりやすく、下り坂を走る時や、交差点で曲がる時などはとてもありがたかった。
ハンドリングについては、当然ながら乗用車よりも不安感は大きい。ハンドルセンターは甘く、中心付近が落ち着かない。また、シャシーのねじれからくると思われる、後輪の設置感の無さについては、軽トラック全てに感じることではあるのだが、やはり上り坂のカーブなどでは内側の車輪が空転するような事態も見受けられた。ハンドル操作に対してタイムラグもあり、前後バランスも良いとは感じなかった。しかし軽トラックはみんなこんな感じであるし、キャリイと比べて特段悪いとも感じなかった。
スタビリティーについて、これは今まで乗った軽トラックの中で、ダントツで優れていると感じた。前述した通り、たしかにハンドリングなどは軽トラックを意識させるものではあるが、少し混雑した道路や、あるいは直線を走っている限りは、軽トラックに乗っているとは思えないほどの安定感を見せてくれた。これまでは、軽トラックに乗っているときは、特有の恐怖感というか、無意識的に注意深さのようなものを発揮しているためか、自分の思っているよりもスピードが出ていないということが多々あったのだが、このハイゼットの場合は、本当に普通の軽乗用車に乗っているときと同じように、いや、車種によってはそれ以上の安心感を持って、周りの車のスピードに、臆することなくついていくことができた。要因としては、シャシーの剛性が先代のものと比較して高められているということは想像できるが、高速走行時のタイヤの接地感も向上しているので、足回りも改良が加えられているのだろうと思う。
乗り心地に関しては、ふわふわだった先代ハイゼットと比較すると、固く引き締められたという印象。スズキのキャリイと比較してもやはり硬めである。とはいえ、苦痛で耐えられないほど跳ねるというわけではなく、安定感を出すための、ギリギリの範囲と捉えることができるので、決して印象が悪いわけではない。先代と比較してシャシーの剛性も上がっているので、大きなギャップを乗り越えても、車が前後にギクシャクすることはなく、軽トラックとしては快適な部類であると感じる。ただし、シートは座面、背もたれ共にクッションが薄く、割とすぐにお尻が痛くなってしまったことも、当たり前といえば当たり前ではあるが、一応報告しておく。

先代のハイゼットは、乗り心地がふわふわしており、快適だった反面、安定性に欠けていた面は否定できなかった。今回のハイゼットは、シャシーの剛性を引き上げ、足回りも引き締めたことで、乗り心地は若干硬めになったものの、安定感は格段に向上しており、高速走行がとても得意になっていた。言うなれば、先代のハイゼットはフランス車的であったのに対し、今回のハイゼットはドイツ車的になったと言えるかもしれない。ではライバルであるキャリイと比較すると、一長一短なところがあり、なかなか甲乙つけづらい。乗り心地については、キャリイの方が若干有利で、ハンドリングは同程度。ただエンジンについては、やはりダイハツ製は体感的に力強いし、トランスミッションなども、低速域で扱いやすい。決定的な点は何処かと探れば、やはりハイゼットのスタビリティーの高さということになる。いったいどれほどの人が、軽トラックにロングツーリングの性能を求めているのかはわからないが、少なくとも現状、ロングドライブを行うのなら、ハイゼット以上の選択肢は、軽トラックにはない。今までどちらかといえば農道を、トコトコと走る道具というイメージが強く、幹線道路などでは馬鹿にされがちだった軽トラックではあるが、このハイゼットであれば、安心してロングドライブ、高速走行することも可能であろう。現行モデルの軽トラックでは、まだホンダのアクティに乗っていないのだが、ハイゼットやキャリイと比較して、どのような車に仕上がっているのか、とても気になる昨今である。


走行距離401km 給油量20.3L  今回燃費19.8km/L

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