ランドローバー・ディスカバリースポーツ 試乗レビュー









エンジンは先週のイヴォークと同じ、2リッターガソリン、インジニウムエンジンであるため、特性もほとんど同じ。2千回転あたりから徐々にターボの過給圧がかかってくる感覚がある。もう少しアクセルの踏み具合に対してリニアに反応してくれると、特に低速域では扱いやすくなると思う。高回転側でも最後のひと伸びがほしい。やはり今回の車の性格を考えると、イヴォーク以上ディーゼルを選んだ方が良いと感じてしまった。エンジン音も多少は聞こえてくるが、それよりもタービンが吸い込む空気の音がイヴォークよりも大きいのが気になった。
トランスミッションはこれもイヴォークと同じくZF製の9速トルクコンバータ式オートマチックだが、こちらもイヴォークと同じ印象だ。変速スピードは遅くはないが、フォルクスワーゲンあたりのデュアルクラッチと比較するとどうしてももう少しスピードと、ギアチェンジした時の「カチッと感」がほしい。トルコン式とは言え9段もあると、0キロ発進時以外はほとんどロックアップされているようで、ダイレクト感はあり、時速100キロで走行しているときはエンジンの回転数は1600回転付近で、静かな上に、燃費的にも有利だと思われる。ただ低速域での扱いには難があり、先ほど述べたエンジンの特性と相まって、市街地でギクシャクぜずに乗りこなせるようになるにはある程度時間が必要かもしれない。イヴォークに乗った際は、省いてしまったのだが、アイドリングストップについてはマナーがとても良かった。エンジン停止、および再始動時の振動は少なく、また音もとても小さい。再始動は電光石火で、始動直後のエンジンの違和感もない。かつては外国車といえばアイドリングストップが苦手というイメージがあったのだが、各社ともかなり精度が上がってきており、国産、外国車ともメーカー間でのレベルの違いがほとんどなくなりつつある。逆にいうと、もはやこれくらいの出来でなければお話にならないと言える時代になってきつつある。
着座位置、および目線感覚としては、典型的なSUVのそれだ。周りを見下ろすような視線感覚は、SUVのトップブランドの車を乗りこなす優越感にどっぷりと浸ることができる。内装の囲まれ感も少なく、細部の意匠は当然ながらイヴォークと同じではあるものの、スポーティーで清潔感あふれるイヴォークの内装とは異なり、力強くて頼り甲斐がありつつも、やはり高級車の価値観は譲れないという絶妙な内装だ。イヴォークは洗練されたロンドンをイメージさせる一方、ディスカバリースポーツはもう少し田舎の、コッツウォルズあたりがよく似合う。イヴォークでは正直言って最悪であった後方の視界も、ディスカバリースポーツはいくばくかはマシであった。だた、決して良くはない。
ハンドリングについては、イヴォークから乗り換えてしまうと、性格の違いに驚くことだろう。イヴォークではステアリングのゲインが神経質なほど高く、ハンドルを切れば間髪を入れず、切った以上に曲がるイメージだったのだが、ディスカバリースポーツにはそのようなキャラクターの面影すら見られず、ハンドルを切るとまずは車体がロールし、ロールの底をついてから車が曲がりだすため、かなりゆったりとした車に乗っているというイメージだ。車両重量も重く、しかもドアや屋根などの重心位置から遠くにあるものがとても重く感じ、従ってロール量もかなり深い。タイヤのバイト感も今一つで、特にウェット路面だとタイヤが車の重量に耐えきれず、ズルズルとルーズに動いてしまうこともしばしばある。車検証によれば、前輪には停車時でも1110キロの重さがのしかかっているようで、これはトヨタのアクアの車両重量とほぼ同じである。制動時であれば、それ以上の負荷になるはずなので、コーナリング時の前輪は、どれだけの重さを支えているのか、ちょっと不安になる。イヴォークのハンドリングは、スポーツカーそのものであったのに対し、ディスカバリースポーツは典型的なSUVそのものだ。この特性から想像できるように、ワインディングをキビキビと走るのはとても難しい。というよりも、そんなことはするべきではない。ワインディングだろうが高速道路だろうが、アドレナリンを抑え、ゆったりとクルージングするのがちょうど良い。実際、ボディやステアリングの剛性が高いため、たしかにハンドル操作にタイムラグはあるが、曲がり出してしまえばもう不自然な動き方はしない。次のコーナーをしっかり見て、車の動きを確かめながら、スーーっとハンドルを切って行くと、スポーツカーとはまた違った気持ちの良さを感じ取ることができる。これはこれである種の世界観であり、レベルは高いのだと言っても良い。
高速域でのスタビリティについては、こちらもさすがはヨーロッパ車、とても高かった。イヴォークもスタビリティは高いと感じていたが、ディスカバリースポーツはハンドリングがおおらかな分、より高速でもゆったりとした気持ちで運転できた。先ほども述べた通り、ボディの剛性が高いためということもあるだろうが、どんな時でも地面をとらえ続け、路面の追従性は、SUVとは思えないレベルで高いため、サスペンションのセッティングが、非常によくマッチングしているのだと思われる。ハンドリングは決してスポーティーではないが、全体としてのバランスが非常に良く、高速クルージングも安楽な気持ちで行うことができた。一つだけ難点を言えば、雨でできたわだちや、水溜りにはハンドルを取られやすく、外乱に影響されやすいのかもしれないと感じた。これが改善されれば、矢のようにまっすぐ、という説明の仕方ができたのにと思う。
乗り心地については、外国車ではよくあることだがロードノイズが少し気になった。低周波の音から高周波の音までよく拾い上げ、また、イヴォークよりも特に後ろ側の空間が広いためか、7人乗りで内装部品の点数が多いためか、耳の中がこそばゆいステーションワゴン形状の車が陥りがちな症状が出てしまっている。ロードノイズが出てしまうと言うことは、スタビリティ性能の向上などを考えれば、ある程度は仕方のないところだと思うが、それでもやはり聞こえてくる音質には耳障りにはならないような工夫をしたり、あるいは内装の工作精度をさらに向上させるなど、この車の値段を考えたら、こだわって欲しかったところである。また、エンジンの振動については、割と素直に床に伝えてきてしまっていると感じた。風の音については、SUVとしては標準的と言えそうだが、ロードノイズが大きいため、まずはこちらの解決が先だと言えそうだ。低速域から高速域にかけて、路面の凹凸や段差などでの車の揺れ具合はほとんど変化がなく、どのような速度域でも同じような揺れ方をする。ハーシュネスの動き出しはマイルドだが、上下動の幅は割と大きいため、乗り心地が硬いと思う人と、柔らかいと思う人の両方がいるかもしれない。サスペンションはかなり多くの仕事をしているようで、ブレーキを踏んで停車した時など、後ろに揺り戻すような動きが発生するほど、ストロークが長い。何度も言うがボディの剛性は強靭であるため、ブルブル車が揺れ続けるようなことはない。

イヴォークがSUV、あるいはスポーツカーの再定義をしようとした車であれば、ディスカバリースポーツは既存のSUVの価値観にしっかりと当てはめられて作られた車だ。エントリーモデルはイヴォークよりも安いが、実際のところほとんど同じクラスであると言ってもいいだろうから、この2台は完全に味付けが好きな方を選べば良いと感じるし、車にあまり乗り慣れていない方でも確実に違いを感じ取れることだろう。ランドローバーにクロスカントリーらしい雄大さや、おおらかさ、あるいは迫力を求めていると言うのであれば、予算次第では迷わずディスカバリースポーツをお勧めする。

給油量65.4L 走行距離538.7km 今回燃費8.24km/L


詳しい解説はこちらをご覧ください!
https://www.youtube.com/watch?v=k5iCoSkyFPI

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