トヨタ・C-HR 試乗レビュー








世界的に人気となっているカテゴリーである小型SUVだけに、勢いの無いセダンと比較すると、日本で買えるものだけでもまさに百花繚乱といえるほど様々な車種がひしめき合い、個性を主張しあっている。ルノー日産三菱グループおよびフォルクスワーゲングループについで、自動車業界を牽引しているトヨタ自動車が、このカテゴリーに参戦しないわけもなく、プリウスと同じハイブリッドシステムを搭載した今回のグレードと、1.2リッターのダウンサイジングターボエンジンを搭載したモデルを投入したのが、2016年のことになる。私はまず、東京都はお台場にある、メガウェブにて試乗を行なったのであるが、正直にいうと、1.2リッターのダウンサイジングターボエンジンは力不足で、タイヤの最初のひと転がりに途方も無い時間がかかるような気がしていた。車両重量がほとんど1.5トンの車を、ターボ付きとはいえ1.2リッターで、ダウンサイジングターボには厳しい日本のレギュラーガソリンを使い、しかもトランスミッションがCVTと悪条件が重なってしまった。C-HRが登場した当初は、欧州仕様のMTも日本にいずれ導入すると言った話もあったのだが、現時点ではMTが追加されるような気配はない。ハイオクガソリン仕様で、MTによって操ることができればなんとも奥が深い、楽しいパワートレインになるだろうと予想する。一方で今回乗車した1.8リッターのTHS、ハイブリッドシステムについて、このパワートレインの優秀さについてはこのチャンネル(ブログ)では何度も取り上げているため、いまさら説明するまでもないだろう。相変わらずシームレスで、振動や騒音も少なく、クレバーなシステムだ。ではC-HRという車とのマッチングで考えるとどうなのかという話だが、そう考えると好き嫌いは分かれてしまうかもしれないし、個人的にはこの車のスポーティーさを考えれば、こぎみ良くマニュアルトランスミッションを操作するか、もしくはパドルシフトで操りたいところだ。出だしの加速感はモーターのトルクによって車重1.5トンを感じさせないほど軽やかだが、中速域から高速域へ移行するときの伸び感がもう少し欲しい。また、ワインディングを走っている時のように、アクセルのオンオフを繰り返していると、アクセルのツキが悪くなってくるため、もっとレスポンスに優れたパワートレインが欲しくなってしまう。以前乗車したカムリの、2.5リッターダイナミックフォースエンジンを使用したハイブリッドシステムでは、トヨタのハイブリッドとしてはかなり良好なレスポンスを示していたため、それと同等の爽快感が得られれば嬉しい。現在C-HRやプリウス、カローラスポーツで採用されている、1.8リッターエンジンは、いずれ2リッターの新型エンジンへと置き換わるため、その際には燃費の向上とともに、ドライバビリティが高まることを期待したい。一方で中国では2020年にピュアEVC-HRが登場するらしく、それであればハイブリッドよりもドライバビリティの高いC-HRが誕生するかもしれない。
この車を語る上で、最大の長所はどこなのかと言われれば、私は迷わずハンドリングであるというだろう。月並みな言い方だが、本当に、意のままに操ることができる。ハンドルを切ると車が向きを変えるまでタイムラグはほとんどなく、適度なロールを伴いながら、自分が行きたい方向に吸い込まれるように曲がっていく。かといって、スポーツカーのようなソリッドさはわずかしか感じず、あくまでも扱いやすく、楽しく、怖くない、一番ちょうど良いところをついていると言っても良い。タイヤの接地感もかなり良好で、路面が綺麗なところであればそつなく、荒れている場所であればタイヤが意地になって路面をなぞっていくことがよくわかる。これは下手なセダンよりも路面の追従性が良い。同じプラットフォームを使用するプリウスや、プリウスPHVでも、強靭なシャシーのためにハンドリングは自然だったものの、重量に対してタイヤが相対的にプアだったためか比較的急なカーブではわりとすぐにずるずるとアンダーステア傾向になってしまうことが多かったのだが、C-HRはタイヤが太く、またショックアブソーバのセッティングも欧州車的であるためがっちりと地面に食らいついていくような感覚があった。プリウスは燃費を良くするということが至上命題であるため、走りの改善のためにできることも限られてきてしまうのは仕方のないことだが、そこで溜まった技術者たちのフラストレーションを、C-HRで一気に解放したかのような爽快感が味わえて、乗っている身としても楽しかった。三菱のエクリプスクロスはリアのつっぱりに対してフロントが柔らかくノーズダイブ傾向があったため、よりコーナリングが自然なのはC-HRのほうであると言えるが、それでも個人的にはエクリプスのハンドリングの方が好きだと感じた。これはもはや味付け、好みの問題であると言える。レベルが高いのは当たり前、あとは最後のスパイスの部分で車を選べるようになったというのは消費者としては悩ましい一方で、日本車もいよいよここまでの領域に達したのかと感慨深さすらある。
高速道路での印象は、確かにシャシやボディの強靭さは感じるものの、あともう少しだけ直進安定性が高くても良いかもしれないと思った。追越車線から走行車線へ戻るときのレーンチェンジでふらつかずにピタッとおさまってくれるようになれば、国内外のライバルを圧倒できるだろう。ただ、決してレベルが低いわけではない。
乗り心地についても、基本的には良い方だと思った。低速域だろうが高速域だろうが揺れ方に変化はほとんどなく、揺れの幅はプリウスよりも大きいとは感じるが、揺れの角はマイルドになっており、現代的でどちらかといえばドイツ車っぽい質感がある。全体的にかっちり感があり、ボディーが衝撃を受け止めた後も、振動がその後に続くことは一切ない。シートのホールド感も良く、カーブでも体の姿勢は安定している。

見た目のインパクトがとにかく大きい車ではあるが、単に流行に乗ったチャラい車ではない、真面目に作り込まれ磨かれた車だと感じた。特にもハンドリングの自然さはこのクラスの国産車ではひとつ抜きんでたものを感じる。それでも個人的には、パワートレインの素直さ、CVTらしからぬドライブフィーリング、そしてソリッドなエクステリアにおいて、同クラスのライバルの中ではエクリプスクロスの方が好きなままではあるのだが、ハイブリッドで燃費も良く、よりクセのないC-HRは誰にでもオススメできる最近のトヨタを象徴するような一台であった。

給油量26.3 走行距離536.8km 今回燃費20.4km/L


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https://www.youtube.com/watch?v=x6XmI9Q8seg&t=52s

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