アウディA1 試乗レビュー








エンジンは出だしがとにかく元気で驚く。ノートやバレーノなど、3気筒エンジンの車は概してそうだが、排気量やスペック表から想像するよりも出だしの加速感が大きく、驚くことが多い。今回はその中でももっとも瞬発力が大きいと言える。ただ、3気筒エンジンで、しかもダウンサイジングターボともなれば、理論的には当然のことだが、1,2Lのポロのエンジンよりも、上の伸びが良くない。高速道路の追い越し車線に出るときなどは、出だしの印象で余裕だと思っていると、上まで回らず、イライラしてしまうことがある。発進時や低回転域での粘りは、特筆すべき点だと思われるので、どちらかといえば、高速道路やワインディングよりも、街中を走ることを得意とするエンジン特性である。音や振動については、今まで乗った3気筒の中で最も小さく、マナーが良いと感じる。出だしで多少バイブレーションが発生するが、ほとんど気にならないし、巡行程度であれば、音は全く車内に入ってこない。アイドリング中の音も、暖気が終わっていれば、聞こえないレベル。高回転まで回すと、エンジン音は車内に響いてくる。ただ、4気筒エンジンだろうが、トヨタやホンダのハイブリッドだろうが、アクセルを踏み込むとそれなりの音は車内に侵入してくるので、音量自体は問題にはならないだろう。問題なのは、音質のほうで、私個人の感想としては、どうしても3気筒の音は軽自動車というイメージが拭えないため、先程述べた、高回転側の伸びの悪さと相まって、高い回転を維持しながらワインディングを走ったりするときは、どうも気持ちのいい気分になれない。ただこれはあくまで感覚の問題であって、最初からダウンサイジングターボや、3気筒に慣れ親しんだ世代であれば、気にならないのかもしれない。
トランスミッションは、基本的にはフォルクスワーゲンの7速と同様に、節度感があって、操作していて気持ちが良い。ギアを変えた瞬間に、カチッとしたフィーリングをもたらしてくれるのは、精度の高いデュアルクラッチならではのものだ。必要に応じてフリッピングも行われるし、変速スピードも電光石火だ。気になったのは、時速0キロから加速するときのクラッチの繋がり方、機械によって半クラッチ動作を行なっているときのギクシャク感だ。ポロでは、半クラッチ動作を行なっているということが、加速感を通じて伝わってきたものの、気をつけていれば、スムースに発進することができたのだが、A1では低回転トルクがより大きい炒めか、どんなに気をつけてアクセルを踏んでいても、いきなりどんとトルクが出てしまい、同乗者を不快にさせかねない。また、歩くようなスピードで、ノロノロ走る時も、クラッチは繋がるのか繋がらないのかのあたりで迷い、車が前後にギクシャクしてしまう。クラッチの繋がり方の問題もあるだろうが、クリープ状態の時に、エンスト防止のためか、アクセルを少し吹かす制御になっているようで、それも原因の一端をかついでいる。一旦クラッチが繋がってしまえば、あとはもう文句がないのだが、発進時や、超低速域のマナー向上は課題だ。1.2Lのポロではすでに解決済の問題なので、小規模なアップデートですぐになんとかなることだろう。
アイドリングストップのマナーは、やはりドイツの小排気量車の苦手とするところだと、またしても感じてしまった。停車時は車体がブルンと震えるし、再始動時のセルの音も大きい。また、アイドリングストップ復帰直後の、出だしの半クラッチ動作は、さらにギクシャク感が増える。
ハンドリングは、クイックで、かつしなやかであるという印象だ。ハンドルの重さは軽いが、その割には手応えがあり、車の状況も把握しやすい。ロールがポロよりも深いため、ポロほどの安心感はないのだが、タイヤのバイト感が強いため、コーナリングスピードがとんでもなく早い。ボディーやシャシーの剛性もとても強く、車体を傾けながらも、地面に食らいついて離れずに、ある意味力技とも言えるような感覚で曲がっていく。決して悪くはないのだが、気持ち良さでいえば、ポロやスイフトのほうが上で、やはりワインディングを走っていると、ここがこの車の本拠地ではないような気がしてくる。そこで街中でキビキビと走らせてみると、むしろこちらの方が楽しいと感じる。交差点の左折のような、直角に曲がるシチュエーションでも、軽めのハンドルをひょいと切り足すと、蝶が舞うようにひらひらと方向転換してしまう。ドイツ車というよりも、フランス車に近いようなイメージだ。17インチくらいのタイヤを履かせたら、ワインディングはもう少し気持ちよくなるかもしれない。
スタビリティーについては、悪くはないが、やはりタイヤか、サスペンションの剛性が、ドイツ車にしては甘いと感じる。直進安定性は高く、ハンドルセンターも定まっており、フラットな路面では安心そのものなのだが、比較的大きな上下動があると、タイヤの接地感が途端に変化する。高速道路で、一瞬、無重力のような状態になることもあり、その時はひやっとしてしまう。そもそもエンジン特性上高速域があまり伸びないので、アウトバーンで150キロや200キロで走るような使い方は想定していないのかもしれないが、ドイツ車としてそれってどうなのかというところ。日本の高速道路を法定速度で走る程度であれば、問題はほとんど起こらないだろう。
路面からの突き上げ感、ハーシュネスについては、コンパクトカー離れしたレベルの高さを感じる。下位モデルとはいえ、さすがはプレミアムブランドである、アウディーだと感じる。路面から大きな入力があった場合、初期の動きはとてもまろやかで、角がとれた、まるい乗り味である。ボディーの上下動自体は大きいのだが、動きが急速ではないため、内臓を突き動かすような腰に響く動き方は一切しない。砂利道のような細かい揺れが続く場面でも、まるで、地面を舗装しながら走っているかのように、何事もなく通過してしまう。ボディーの剛性も強く、ボディー側でブルブルと振動が響くことはなかったのだが、唯一乗り心地で難癖をつけるとすれば、道路の比較的大きなギャップを通過した時、サスペンションかタイヤか分からないが、比較的長い間、ブルブルとした振動が感じ取れた。これは、前述した通り、サスペンションの取り付け剛性が比較的甘いからかもしれない。

同じくドイツのプレミアムブランドである、メルセデスのA180は、デザインはとても派手で、乗り心地をある程度犠牲にしながら、極上のハンドリングを手に入れている。そのため、街中で走らせるのには今一歩だが、高速道路やワインディングではとても楽しい。一方で、今回のA1は、狙ったように真逆の車だ。デザインは保守的で、ハンドリングはもう一歩だが、出だしの加速感やしなやかな乗り心地など、街中での使用が楽に感じる。安直に言ってしまえば、郊外重視の人は、メルセデスA180を、街中メインだという人はアウディA1をお勧めするということになるが、かといってアウディーは今のところ、発進時のギクシャク感もあるし、アイドリングストップも精度が高くはない。結局のところ、日本の街中をメインに使うというのであれば、トヨタのハイブリッドか、日産のリーフ、あるいはノートe-POWERが一番使いやすいと思う。もちろん、走って楽しくない車というわけではないので、アウディというブランドを、安価に手に入れたいというのなら、これを選択するのもアリだと思う。ボディーは小さいが、しっかりアウディ顔をしているので、ブランドとしての統一感も感じるとことだ。

走行距離457キロ 給油量23.4L  今回燃費19.6km/L

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