メルセデスベンツ・CLAシューティングブレーク 試乗レビュー








視界は良くない。A180と同じだろうと予想していたが、より圧迫感が大きく、前方の見切りが悪い。後方も長いのだが、実際よりも長く感じ、取り回しが悪そうに感じる。いざ旋回してみると、想像より小回りが利くので驚くが、ちょっと不自然。
シートは、硬く、ホールド感を出そうとしている感じがあるのだが、それにしても硬い。固すぎる。背もたれの角度から腰の部分の出っ張りぐあい、座面の長さまで様々調整できるにもかかわらず、ついぞしっくりくるポジションは見つけられなかったし、30分走っただけで腰が痛くなり、車を降りる頃にはお尻も痛くなっていた。一般的には、国産車は乗り降りのしやすさを重視し、ホールド感があまりないシートが多く、一方でドイツの車はホールド感はあるものの、乗り降りのしづらいシートが多かった。CLAは乗り降りはしやすいが、ホールド感は感じず、またドライビングポジションも悪く感じた。しかも、基本設計が右ハンドルではないためかもしれないが、Aクラス系のメルセデスは概して言って、運転していると踵が痛くなってくる。

エンジンは馬力、トルク共に必要十分だ。ダウンサイジングターボなので高回転側では多少伸び感に不満を持つ人もいるかもしれないが、現代の水準からいえば申し分ないだろう。音については音量自体は小さく、一旦加速しきって巡行体制に入ってしまえば気にならない。しかし、加速中は、音自体はそんなに大きくないが、音質があまり気に入らなかった。いすずのエルフに近いような、4気筒のゴロゴロ感があり、プレミアムブランドであるメルセデスを名乗るなら、今一歩乗員に聞かせてくれるエンジン音を提供してほしい。振動はほとんど気にならないが、強いて言うなら、エンジンブレードで減速している時、床やブレーキペダルに振動が伝わってきたのが気になった。アイドリングストップのマナーは、A180と同じエンジンであるはずなのに、それよりも良いと感じた。停止時のショックはほんの少しだけで、再始動時の音は、セルの音が遠くの方で聞こえるという程度。振動もわずかだ。プジョーの1.6リッターディーゼルほどマナーが良いとは思わないが、フォルクスワーゲンの1.2リッターガソリンよりは出来が良い。また、メルセデスは今まで乗ったどの車もそうだったが、アイドリングストップ中にハンドルを曲げたり、エアコンを始動しても、エンジンが勝手にかかることがないというのが好印象である。
トランスミッションである7速のデュアルクラッチは、半クラッチなどはあまり意識させず、プレミアムなフィーリングでジャダー振動などは一切起こらない。ただ、フォルクスワーゲンのようなカチッとしたフィーリングはあまりなく、あくまでマナーの良さが最優先といった感じ。個人的には、もう少し節度感を持たせた方が、操作する喜びを演出できると思うのだが、プレミアムブランドということを考えるとそれはしかたないとも感じる。
ブレーキについては、遊びがあまりなく、とてもかっちりとした印象。ハイスピードから減速する時はタッチが自然で、剛性感もあり、フィーリングも悪くない。しかし、停車直前で車が前後にぎくしゃくすることがある。これはブレーキ自体のせいではなく、おそらくトランスミッションによるエンジンブレーキのせいなのだが、ショックなく停車するのが非常に難しい。再加速や、ブレーキへの負担を考えたら、仕方のない制御かもしれないが、もう少し自然にならないかなと思う。
ロードノイズはゴーという低周波の音が大きい。風切り音は気にならない範囲。
乗り心地については、a180と明確な違いがあった。a180ではゴツっとした内臓に響くような突き上げ感をよく感じたものの、CLAではそれはほとんど感じず、完全にプレミアム志向に切り替わったということがわかる。シャシーの剛性も高く、不快なバイブレーションも引き起こさないのだが、それだけにこの硬いシートが本当にイライラさせる。
ハンドリングについては、極上な乗り心地とのトレードオフと言えるかもしれないが、はっきりいって気持ちよくない。真っ平らな路面を曲がって行く分には問題は無いのだが、路面に少しでも凹凸があると途端に車体が上下左右にフラフラし始め、思った通りのラインを全く走れない。ボディの剛性は強いため、車体がねじ曲がるようなことはないのだが、サスペンションとステアリングの剛性が出ておらず、カーブの度におっかなびっくりしてしまう。勇気を出してハンドルを切り込んで行くと、意外なほどクイックに曲がってしまうので、絶対的なコーナリング性能は高いのだろうなとは思うが、そこに至るまでの課程に不自然な点が多すぎる。前回乗ったレヴォーグでは、タイヤの磨耗のせいもあり、すぐにタイヤが鳴き始めるなとは感じたものの、サスペンションやステアリングの動き方で、不自然だと感じることはなかった。恐らく、慣れればれボーグよりもCLAの方が速いのだろうなとは思うが、安心してハンドルを切っていけるのはレヴォーグの方だ。また、少し前に乗ったA180は、俊敏性という圧倒的なキャラクター付けがされており、ハンドリングにはかなり拘った様子が伺えたのだが、CLAでは乗り心地まで欲張ってしまった上に、ホイルベースも長くしてしまったため、せっかくのバランスが崩れてしまっている。荷物をたくさん積みたいけれど、運転の楽しさを諦めたくないという人はレヴォーグを買うべきだし、ハンドリングの良いメルセデスに乗りたい人はA180を買うべきだ。
スタビリティは高いが、ドイツ車はみんな優秀なので、これが積極的にこの車を買う理由にはならないと思う。

ハンドリング一辺倒だったA180に対して、乗り心地も諦めない人向けにCLAという思想自体は悪くないと思う。しかし、CLAに関しては全体的なバランスがよくないと感じた。グリップ力の高いタイヤと、剛性の高いシャシーやボディに対してサスペンションやステアリングは剛性不足でハンドルを曲げた瞬間はドイツ車らしくない、ヨタっとした腰砕けの雰囲気があるし、何よりコーナリング途中でのアンジュレーションを受けた場合の動き方は恐怖以外の何者でもない。しかも、シートはA180と同じものでとても硬く、腰が痛くなる。車自体の乗り心地は良いのに、シートが固ければ何にもならない。このシートはスポーティなA180だから許せていたのだ。
デザインは唯一無二で代え難いが、それ以外の理由で購入するというのなら、一旦レボーグを試乗して見てほしい。

走行距離:450km 給油量:30L 今回燃費:15km/L

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