スバル・レヴォーグ 試乗レビュー
エンジンは僅かだがターボラグを感じる。しかし、水平対向エンジンらしく、ひとたび回り出せばとてもスムーズ。振動も殆どなく、パーシャル領域ではエンジン音はほとんど聞こえない。直噴ターボらしく、中間トルクはしっかりでているが、走り出しのひと転がりめの加速感がもう少し欲しい。一方でエンジンは6千回転までしっかり回るため、運転していて気持ちがいいし、パドルによるシフトダウンもしっかりと決まる。最近はディーゼルや燃費重視で中間加速を高めたセッティングのダウンサイジングターボが主流で、レヴォーグのエンジンもかつてのスバルと比較すると低回転寄りにはなっているものの、全体的に見るとまだまだ高回転型だと言える。スペック的にはレガシィの2・5リッターと同じくらいだが、そちらの方がより自然なフィーリングが味わえる。
CVTは出だしで多少もたつく印象があり、先に言った、ターボラグと相まって、トルクが突然出てしまう印象がある。街中では少し扱いづらいと感じた。しかし、一旦走り出して仕舞えばダイレクト感があるし、パドルシフトの操作もスパッと高速に決まる。デュアルクラッチほどのカチッとした感じはないが変速ショックも小さく、Dレンジだと滑らかに、いつの間にかスピードが出ているという印象。高回転まで回すとベルトのキュルキュル音が聞こえてくるが、低中回転では騒音は聞こえない。
ロードノイズは小さい方だと思う。厳しい目で見ると、やはりワゴンは空間が広く、空気が共振しやすいため、後ろからザワザワ感があると言えなくもないが、ワゴンとしては上出来だし、これよりもうるさいセダンはたくさんある。
ハーシュネスは細かい振動はあまり伝えて来ない。大きな突き上げに関しては足がよく動いて衝撃を吸収する上に、振動が後に残ってブルブル言い続けることもない。とても現代的で好感の持てる乗り心地ではあるが、STIスポーツのしなやかな乗り味には一歩及んでいない。ワゴンとして、ツアラーとして性能の高さは折り紙つきだが、ビルシュタインの足ほどの洗練さはなく、時々おや?とか感じる突き上げ感がある。
ハンドリングは、ワゴンとしては、などという枕詞をつけなくても良いほどレベルが高い。まるでスポーツかーやホットハッチのように走りたいラインを正確に走ることができる。クイックというほどではないが、カッチリとした剛性感を保ちつつ、かつしなやかなフィーリングも残してある。電動パワーステアリングを調整させたら、スバルは本当にいいものを作り上げるなと感じる。コーナリング中にアンジュレーションを受け止めても、上下動こそするものの、姿勢はフラットなままで、ピッチングはあまり起きず、接地感も失わずに曲がり続ける。タイヤのバイト感もしっかり出ており、ワゴンに乗っていることを忘れてしまうほど。フロントの剛性感はしっかりとしる。リアに関してはさすがに少し捻れる瞬間を感じるものの、それでもワゴンとしては大したもの。レベルはとても高いとは思うが、スバルグローバルプラットフォームを採用した新型インプレッサなら、もっと内側に吸い込まれていくような、軽やかさを伴っているし、ハッチバックでもリアの剛性が高くなっていた。レヴォーグにもこのプラットフォームを用いれば、さらに良くなるに違いないだろう。
スタビリティーについては、スバルの普通車で不満に思ったことなどない。ハンドルセンターをほんの少しだけしっかりさせて欲しいとは思うものの、車自体は矢のようにまっすぐと、外乱の影響もあまり受けずに走り続ける。高速域でも車体は安定し、長距離の運転も楽チンそのもの。タイヤの太さなどは違っているものの、ハンドリングやスタビリティーといった項目では、WRXに、かなり近い成績を出せていると感じるし、世界観も通じるものがある。
ただ、この個体は、装着していたタイヤが、比較的走行距離を重ねていたためか、カーブでは案外すぐに、タイヤが鳴き始めるようだった。ハンドリングにおける、タイヤへの依存が大きいような気もしたので、特にキビキビ走る人は、タイヤ選びや点検など、注意する必要があると感じる。
ワインディングをキビキビ走るのも、高速道路を長時間走るのも得意ではあるが、市街地でのストップアンドゴーには多少不満が出た。登場時はマナーが良いと思っていたアイドリングストップも、他社が精度を上げてきたことで、相対的にはショックが大きく、セルの音も大きいと感じるようになってしまった。人間とは贅沢なものだとつくづく思う。ただ、街を抜けて仕舞えば素晴らしいハンドリングと優秀で情緒に訴えかけるエンジンが、最高のドライビング体験を用意してくれている。通常のレヴォーグでも充分ではあるが、やはりSTIスポーツの方が、乗り心地、ハンドリング共にレベルが一段高い。あとうん十万円足してでも、私はSTIスポーツを買うべきだと思う。
ウィンタースポーツが趣味の人は、レヴォーグ以上の選択肢は、現状では無いと個人的に思っている。スキーやスノーボードなど、長いものを積みこめるし、凍結時の登坂能力を考えたら四輪駆動が良いのは当然のこと。だったらSUVでいいじゃ無いかと思う人も多いと思うが、スキー場までの山道は、圧雪か凍結のことが多いはず。となるとスタック耐性よりむしろ、重心や着座位置が低く、路面状況を把握しやすい車の方がむしろ安全だ。私の地元ではウィンタースポーツを嗜む人が多く、そういった人に、私は今までこの車をお勧めしてきたが、実際に購入した人は、今とても満足しているということも報告しておこう。
スバルはいまでこそSUVというイメージの強いメーカーではあるが、レヴォーグはステーションワゴンの良さを再認識させてくれる存在で、図らずも、SUVへのアンチテーゼを提起してしまったようだ。
走行距離:474.3km 給油量:41.8L 今回燃費:11.3km/L
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