ホンダ・クラリティFUELL CELL 試乗レビュー
着座位置はセダンとしては高いが、ミライほどの違和感はない。ポジションは少し取りづらかったが、普通に運転できる。
5人乗りというのが素晴らしい。しかも後ろの席は広い。トヨタですら現状は4人乗りにしかできないというのに。これは本田のMM思想による乗員最優先の設計だからだろう。
後ろの席のホールド感は4人乗りのミライの方が良かったが、やはり5人は乗れた方がなにかといいだろう。
加速感はミライより良い気がする。重量はミライより40キロ重いが、ここまで重いと40キロの違いなんてわからない。特にも中速域の伸びがミライよりも良く、郊外道路を走っていると楽しく感じる。
ガソリンやディーゼルのように、段や息継ぎがないというのは、ミライと同じ。また、電気自動車と同じ特性で、感覚的な乗り心地の良さに貢献している。
FCスタックからの騒音はミライより静か。ただ、ミライはモーーーという初めて聞く独特の音だったのに対し、クラリティは周波数が高く、モスキート音のように聞こえる。当然ではあるが、内燃機関搭載車よりも圧倒的に静か、振動も無い。ロードノイズはクラリティの方がうるさく、風切り音もミライよりうるさい。音関係でトヨタに勝つのは、正直至難の技だと思う。
乗り心地に関しては、簡単に言うとミライよりも良いと感じた。ミライで感じたバネ下のバタバタ感は、無いとは言えないが格段に少なくなっている。非常にフラットライドで、乗り心地に関しては車の重さが良い方に働いている感じがする。ボディーやシャシーの剛性はミライと同等くらいに感じるが、サスペンションとタイヤの剛性は圧倒的に上。ミライでは重量級の車体に対して、タイヤは細く、エアボリュームも厚すぎる。その上エコタイヤであるため、設計がちょっと無理していた印象。クラリティもエコタイヤだし、一般的なガソリン車のセダン、しかも700万円代のものと比べると、まだまだ未熟なところがあるとはいえ、ミライよりも設計には余裕がありそうな印象。
ハンドリングは初期の操舵フィーリングが甘いのはミライと同じだが、切り増した時は全然違う。どちらも剛性は高く、車の動きを予測しやすいと言う点は共通しているが、タイヤの接地感はクラリティの方が圧倒的に上。ロールもミライよりも少ない。タイヤが太く、エアボリュームも薄いため、当然といえば当然ではあるが、クラリティの方が、より意のまま感がある。ワインディングを走った場合、楽しいのも、速いのもミライよりクラリティの方だ。
高速時のスタビリティは、若干ではあるがクラリティの勝ち。ハンドルセンターはもう少し煮詰めが必要かなとは思うが、外乱の影響を受けにくいのはクラリティの方だ。水たまりを超えても、車はしっかり前を向き続けるし、ハンドルが取られることも少ない。
ミライに乗った時、重くて複雑な燃料電池を積んでいるわりには、とてもいい車だなと、素直に思ったが、同時に新しい技術なので、ちょっと甘い目でみてしまっていたのは事実。ガソリン車、特にも同価格帯の高級車と比較して、そのレベルに達していないのは当たり前のことだと思っていた。しかし、クラリティは乗り心地、ドライバビリティ共に納得のできるレベルに仕上がっていた。燃料電池車だからといって、あらゆるものを犠牲にする必要がなく、普通に乗っていて楽しく、しかも速くて快適な車だった。ただ、航続距離の公表値750キロを達成するのは絶対に無理だ。今回は170km走行で、タンクは残り6割程度、走れてもせいぜい400キロ程だろう。そうは言ってもやはり個人的に気に入ったのは、ミライよりもクラリティで、コンフォート性、スポーティーさ、共に納得のいく車であった。
走行距離:170km 水素充填量:2.45kg 料金2910円
↑ランニングコストは非常に高い。高速道路、郊外道路であればWRX STI以上にかかってしまう。水素の製造や貯蔵にはそれなりの技術革新が必要かもしれない。
詳しい解説はこちらをご覧ください↓
コメント
コメントを投稿