トヨタ・ハイエースグランドキャビン 試乗レビュー
エンジンは4気筒の2700ccであるため、一個あたりのシリンダーが大きく、もしかしたら、トルク重視でもったりとした印象になるのかと思いきや、高回転まで回してもかなり粘る。Dレンジでアクセルベタ踏みだと、レッドゾーンを超え、6千回転シフトで、高速型のパワートレインだと言える。ハイエースバンで乗った3000ccのディーゼルエンジンの出来が良かったので、できればそちらの方が車のキャラクターから言っても、合っているような気もするが、9人乗車で、荷物を満載にした状態でも、トルクはしっかりと出ており、時速100キロまでならとても快適だ。高速道路の追い越し車線を走る時などは、さすがにもう少しパワーが欲しいと感じるが、ガソリンエンジンのモデルであると言うことを考えれば、これ以上はオーバースペックだと言う判断かもしれない。街中ではキビキビと走れるし、自然吸気の軽自動車や、リッターカーなどよりも余裕のある走りが楽しめる。
ガソリンエンジンと組み合わされる6速ATは、およそ優秀であると言ってもいい。マニュアルモードではシフトアップの時はかなりタイムラグがあるが、シフトダウンの時は、フリッピングして回転数を合わせ、ショックも少ない上に変速スピードも早い。このマニュアルモードは、車の性格上、スポーツ走行を楽しむと言うものではなく、下り坂などでスピードを調整するためのものだと解釈できるため、つまりはシフトアップの遅さはあまり問題にはならない。その点はとても良いセッティングだと感じる。一方で、高速道路の上り坂などにさしかかり、車自身の判断でシフトダウンする、いわゆるキックダウンの状態になった時のマナーは良くない。車の加速力が突然変化し、後ろにGがかかるため、同乗者を不快にさせてしまうかもしれない。東北自動車道の盛岡以北のような、アップダウンの多い高速道路を走行するときは、キックダウンが起きないように、慎重にアクセルを踏む必要がある。ちなみに、マニュアルモードの状態にしても、アクセルを強く踏むとキックダウンは起こってしまう。ただ、車の重量と、エンジンのスペックに対し、出だしの加速が良いと感じるのは、このミッションのおかげに他ならない。高いトルクに対応する、多段オートマチックは、耐久性に問題があるため、開発は難しいとは言えるかもしれないが、ハイエースはぜひとも、ディーゼルのモデルにも、6速のトランスミッションを採用して欲しい。(先のMCでディーゼルにも6速が採用された)
乗ってすぐに感じたのは、足がよく動くため、乗り心地は良いと感じる。さすがに高級セダンほどのしっかり感はないし、重心が高いため、運転の荒いドライバーだと酔ってしまう人が続出してしまいそうだ。また、アルファードなどと比べても、床のバタバタ感も感じる。しかし、ベースがバンで、しかも10人乗りの割には、車内には余裕が感じられる。今回は最大で9名乗車、しかも荷物をたくさん積んだ状態で走行したのだが、狭さに不満を言ったり、酔ったひとも、移動自体に疲れてしまったと言う人もいなかった。きちんと丁寧に運転さえすれば、快適な移動空間となりうる。
ロードノイズは、エコタイヤのゴロゴロ音が車内に響きやすく、また風切り音は高速道路でかなり聞こえてきた。みるからに空気抵抗の悪そうな全面なので、これも仕方ないところかと思う。
ハンドリングはゲインが低く、ハンドルの切り出しにタイムラグがある。これは、箱型の車、特にもエンジンがキャビンの下にあり、運転席が前輪よりも前側にある、いわゆるキャブオーバに近い形の車の宿命であると言える。それに加えて、ハイエースといえば、高い信頼性が求められる車であって、国内外の、過酷な環境において、長期間、長時間の使用に耐えられるような設計にしなければならない。したがって、ボディーやシャシー、あるいはステアリングやサスペンションなど、負荷のかかる部品は、あえて剛性を落とすことによって、車の長寿命化を図っているということを考えれば、ホットハッチや、スポーツクーペのような、ソリッドで、スポーティーなハンドリングは望むべきではないと言える。
それよりも大事なものは、スタビリティーだ。正確に言うと、この車の場合、どれだけの高速度で安心できるかと言うよりは、そこそこの速度で、いかに長時間走行しても、運転者や同乗者に疲れが現れないかと言うことが大事だと言える。前述した通り、乗り心地が良く、前輪のダブルウィッシュボーンサスペンションはしっかりと動いて地面を捉えるため、安心感が高い一方で、ワゴンボディー特有の、剛性不足は感じた。そもそもステアリングのゲインが低いため、攻めたハンドリングをしようという気にはならず、後輪の接地感がどうとか言える段階ではないため、カーブの多い高速道路では、普通の車よりは遅いスピードで走行しなければならない。ただ、直線に関していえば、安心感は高く、意外なほどフラットに直進してしまう。何も考えずに運転していると、知らない間にスピードが出てしまっているほど、直進安定性は良い。ただ、ハイルーフということもあってか、横風の影響はとても受けやすいと感じた。
比較的大きな車であれば、なんでもかんでもディーゼルが良いと言うつもりはない。一回当たりの走行距離が少ない人や、そこまで長期間使用しないと言う人であれば、ランニングコストよりもイニシャルコストを重視するべきだし、アイドリング中の音の静かさは特筆もので、これだけでも、ガソリンエンジンは良いと思ってしまう。6速ATが組み合わされるガソリンは、トランスミッションとのマッチングがよく、低速域ではトルクの小ささを意識させることはない。しかし、私の今回の使い方のように、長時間郊外道路や高速道路を走っていると、トルクが大きいディーゼルの方が良かったと思ってしまう。普通免許で乗れる9人乗りでも、ディーゼルがあればもっと使いやすいと思うし、バンやコミューターのディーゼルも、そろそろ6速にして欲しいと感じる。そして時々言っていることではあるが、日本は軽油が余っているため、地球環境に優しいと言えるのは、現状の日本では圧倒的にディーゼルの方だと言える。
とはいえ、車体や足回り、あるいはブレーキのしっかり感は想像していたよりもかなり良くできており、またシートの出来も良いため、長時間高速度で、しかも定員ギリギリの人数での運転を続けていても全く疲れることはなかった。このような車を作らせたら、トヨタの右に出る者はいないだろう。ライバルであるキャラバンに乗る予定はないので、比較ができないのが残念なところだが、こういった実用一辺倒の製品こそ、日本製の良さが光るものだと感じる。
今回燃費8km/L 走行距離680.8km 給油量84.6L
詳しい解説はこちらをご覧ください!↓
https://www.youtube.com/watch?v=n75vZM8hq_Y&index=98&list=PLw0Odm5d5QLYSGkODlZom00J37El1FU-t
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