トヨタ・カムリ 試乗レビュー







加速感はとても力強い。モーターが積極的に加速に介入し、なめらかな加速感を実現している。トヨタのハイブリッドはどの車もなめらかではあるが、それに力強さをプラスした感じ。濡れた路面では多少荒くアクセルを踏むだけですぐに電子制御が介入する。今までのトヨタのハイブリッドの印象としては、出だしのトルク感はあるものの、高速域ではあまり伸びない印象があった。それは、構造上仕方のないことだと思っていたのだが、新型のカムリに関しては、高速域からさらに加速する時でも伸びが良い。排気量の大きいエンジンの余裕を感じるので高速道路で追い越しをかけるときなどはとても楽。停車時から加速するとき、最初はモーターのみを使用するが、速度が乗ってきたり、アクセルを踏み込むと、エンジンが始動する。エンジンが始動した瞬間のショックは、決して大きいわけではないが若干感じた。プリウスやプリウスPHVよりも大きいが、もしかしたら、まだ新車で、トランスミッションがよくなじんでいないからかもしれない。
エンジン音はモーーというこもった音で、トヨタのハイブリッドに慣れている人にとてはおなじみのものだろう。巡航レベルであれば音はほとんど聞こえない。アクセルを踏み込んだ時は車内にエンジン音が響くが、アクセル全開で、静かなままのガソリンエンジン搭載車なんてほとんどないので、これは仕方ないだろう。パワートレイン、ドライブトレインに関して、先代モデルと比較して、フィーリング的には大きく変わらないが、全域で力強くなった。特にも高速域でさらに伸びる特性は今までのトヨタ製ハイブリッドには感じられなかったレベルで、この進化は大いに歓迎したいところ。
ハンドリングに関しては、先代モデルでもレベルは高かったが、さらに磨きがかけられた。TNGAの恩恵か、重心の低さをよく感じる上に、ハンドルの重さもちょうどよく、運転に没頭できる。ボディーやシャシーの剛性はさらに高められ、全長の長い、Dセグメントのフルサイズセダンとは思えない身のこなしを見せてくれる。ハンドルの応答性は高く、ハンドルの動きにしっかり車の動きが追従してくれるため、かつてのような、ルーズなトヨタのハンドリングは見る影もない。高速でカーブを曲がっていくシチュエーションでも、足がしっかりと動き、路面を捉え続けるため、不安感を全く感じないどころか、カーブの途中でアンジュレーションを受け止めた時も、車体は一定の姿勢を保ったまま、ピッチングなども一切起こさなかったのだが、これには正直度肝を抜かれた。ここまで安心してカーブの途中の凸凹を乗り越えられる車は、国内外探してもなかなかない。ロールは若干するため、カーブの出口で姿勢を元に戻すような動きが少し見られるが、ロールの出方は自然であるため、むしろ車の姿勢変化で荷重を把握できる。タイヤのバイト感もしっかり出ており、ハンドルから手応えをしっかりと感じながら、安心してコーナーを曲がっていくことができる。セルフアライニングトルクの出方も自然で、路面の状況も、伝えすぎず、伝わらなさすぎずででちょうどいい。ただし、特にも濡れた路面などでは、カーブの出口で加速しようとすると、内側の車輪が空転することがあったため、より強力な電子制御か、LSDがほしいと思った。
スタビリティーについては、これまた度肝を抜かれた。正直言って、今まで乗ったトヨタの車で、ダントツで良い。スポーツカーのように、フラットに、矢のように進んでいくというよりは、乗員にスピード感を全く感じさせずひたすらに安心感につつまれた空間を展開している。むしろ、日本の道路で走らせるのが勿体無いと思ってしまうくらい、高速域での安定性が高い。この車ならば、ヨーロッパの速度域の高い道路や、アメリカやオーストラリアなどの、ひたすら直線が続くような道も、楽に走っていくことができるだろう。
ロードノイズに関しては、かなり優秀な方であると言える。さすが、荷物スペースとキャビンが分離しているセダンの良いところが出ていると感じる。どうしてもハッチバックやステーションワゴンでは、後ろからざわざわとしたノイズがきになる車が多いのだが、カムリは前からも後ろからも、遮音がよくできており、車内はプレミアムな雰囲気が漂っている。
エンジンからの振動については、エンジンが高回転まで回った時に、アクセルペダルに若干振動が伝わってくるのみで、それ以外はほとんど気にならない。
ハーシュネスについては、先代のカムリと比較して、最も進化した点だと思う。段差を乗り越えた際などは、サスペンションが動きをよく吸収し、初期の動き出しがふわりとしていてあたりがやわらかい。その上ボディーの動きは最小限に抑えられているし、前述した通り、ボディーやシャシーの剛性も非常に高いため、不快な揺れをひきづることもない。昔の高級車のように、ただひたすら足を柔らかくした、ふわふわな乗り心地というわけではなく、カシッとした節度感を持たせつつも、吸収すべき揺れは吸収し、車体の動きはあとまでひきづらないという、非常に現代的な乗り心地になった。砂利道のような、細かい揺れが連続するような場面では、地面をなめらかに慣らすように走ってしまう。先代モデルに乗った時、正直にいうと、非常にコツコツ感をがあったため、はっきり言ってがっかりしてしまった記憶があるのだが、そう言ったウィークポイントはしっかり解消されていた。ハンドリングやスタビリティを高めておきながら、乗り心地を大幅に改善できたのは、TNGAのおかげに他ならないだろう。

カムリに乗って感じたのは、トヨタの本気度合いであった。今までは、正直、トヨタの車で、特にも乗り心地やドライバビリティの面で、満足する車に出会えたことがなかった。ただ、この新型カムリの場合、ハンドリングは大型セダンとは思えないくらいレベルが高く、スタビリティーもいままでのトヨタ車とは一線を画すレベルであった。その上、乗り心地まで良くなってしまっており、積極的に選ぶべきセダンに成長してしまった。ライバルである、スバルのレガシィと比較すると設計が古いということもあるのだが、エンジンのフィーリング以外では、ほとんどの項目で勝ってしまっているし、マツダのアテンザさえも脅かす存在となっている。旧型では不満が出た乗り心地も、非常に現代的に変貌を遂げており、はっきり言ってしまえば、今まで乗ったトヨタの車で、唯一気に入ったと言えるかもしれない。トヨタよ、本気を出せばここまでのものができるのに、どうしていままでやらなかったのかと問い詰めたい。
最近よく上がっている新型カムリの評論を見ると、デザインは奇抜だし、走りも良くなってはいるが、特徴がなく、結果として目立つ存在にはなれていないというものが多い気がする。確かに、乗り心地や走りを全方位的に進化させたため、これと言った特徴が消えたのも事実だ。ただ、私にとってみれば、トヨタの車が、ここまでレベルの高いものに進化を遂げたというだけで、もう感動もので、走りも乗り心地も、ユーティリティーも諦めない人にとっては、救世主のような車であると感じる。私を含め、SUVやミニバン、ハッチバックやステーションワゴンでは、満足できないという人にとって、うってつけの存在であるように感じる。

走行距離507.6km 給油量25.5L 今回燃費19.9km/L

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