フォルクスワーゲン・ポロ 試乗レビュー









エンジンは1.2lのダウンサイジングターボ、低回転では非常にトルキー。高回転での気持ちよさはNAにちょっと譲ってしまうが、全体としては優秀だと思う。4000回転位が最もパワー感があり、そこから徐々に息切れして行くような印象。1160kgのボディを引っ張っていくには充分以上のトルクとパワーだ。低速でゴロゴロ感は多少あるものの、パーシャル領域ではエンジン音はほとんど聞こえない。振動は、回転数が上がった時に、若干ハンドルに伝わる。
7DSGは出だしでトルコンやCVTにはない不自然な動きが出る。クラッチが繋がるまでのタイムラグがあり、加速しないと思ってアクセルを踏見込むと突然トルクが出てしまう。ただ、コツはすぐに掴めるのでジェントルな発進を心がけていれば、それほどマナーが悪いとは思わない。変速はショックなく、かつスピーディに決まる。感覚をつかんで仕舞えば、マニュアルモードで峠道を走るのがとても楽しい。ツーペダルながら、自分は今、機械を操作しているのだと、運転者に意識させてくれる演出は、大衆車ブランドである、フォルクスワーゲンだからこそかもしれない。メルセデスの7速デュアルクラッチは、マナーはいいものの、この車と比べると、機械を操作する喜びに欠けていると感じた。
アイドリングストップのマナーは、正直良くない。始動した瞬間にぶるっと車全体が震えるし、クラッチが繋がった時に突然トルクが出てくる。メルセデスでも思ったが、アイドリングストップの技術に関しては、日本メーカーがかなり優位だ。
ロードノイズは比較的入ってくる、風切り音はとても小さい。
ハーシュネスについては、比較的大きい。ボディ剛性がとても強く、塊感があるため、アンジュレーションを受け止めた後、揺れが続くことは一切許さないが、その代わり、道路の凹凸は一つ一つ粒立てて伝えて来る。ちょっと設計の古い、ドイツ車の典型的な乗り心地で、日本人やアメリカ人、あるいはイギリスや北欧の人はあまり好まない、大陸ヨーロッパ人好みの乗り心地であると言える。足は引き締まっているが、ボディーの一体感はとんでもないレベルにあるため、個人的にはとても好きな乗り心地だ。マツダや、最近のトヨタも、どちらかといえばそういった傾向にあるが、小さな車でも、雄大で、スケールの大きい、重厚感のある乗り心地に仕立てようとする向きがある中で、フォルクスワーゲンやスズキなどでは、小さい車は、小さいということを意識させた上で、塊感を演出するという乗り心地は、それはそれでレベルが高い戦いであると言える。
ハンドリングに関しては本当に素晴らしい。ゲインが高く、入力に対して車の向きが正確に変わる。かといって不安を感じるほどクイックというわけではなく、あくまでファミリーカーの本分をわきまえたまま、正確に、安全にコーナーを曲がっていくことができる。かなり攻めたハンドリングをしていると、リア側で、ボディなのかサスペンションなのか、コーナー出口でほんの少しストレスを解放するような動きがみられるが、それも目くじらを立ててみた場合の話であって、ほとんど気にならないと言ってもいい。ロールはほんの少しだけ出るが、動きは自然で、タイヤのバイト感もあり、路面状況もよく把握しやすい。
スタビリティーはさすがドイツ車。非常に高い。かなりハイペースで走っていても、運転者も同乗者も安心そのものだった。ボディーやシャシー、サスペンションの剛性が非常に高く、日本の高速道路程度のスピードなら不安感は微塵も感じない。マツダのデミオのように、小さな車でもまるで大きな車を運転しているかのような感覚をもたらすものとは違っていて、きちんと小さい車に乗っているということを意識させつつも、高速域では路面に吸い付くように安定している。どちらが良いのかと言われると、好みなのでなんとも言えないが、個人的には、小さい車に乗っているときは、それ相応のフィーリングの方が楽しいと思っているので、こういった乗り味は大変好みだ。

ポロという車を、ざっくりと言ってしまうと、日本車的な親しみやすさと、ドイツ車的なしっかり感、かっちり感をうまく融合させている車だ。メルセデスやBMW、ミニなどに初めて乗ったときは、視界や操作感、乗り降りのしづらさなどで、慣れるまで時間がかかってしまった。ドイツの車は、運転が楽しいし、質感も高く、特に高速域では、概して言って、ほかの国の車よりもレベルが高いと感じる一方で、果たして日本の道路で使用することを考えた場合、必ずしも合理的とは言えないと感じることも多々あった。しかし、ポロの場合、視界は良く、乗り降りもしやすく、ウィンカーが逆の位置にあるということを除けば、それなりに既存の価値観に逆らうような操作性の悪さはない。しかもそれでいてハンドリングやスタビリティーは一級品で、ドイツ車らしい走行フィーリングが楽しめる。ほかのドイツメーカーが車造りにおいて、キャラクター付けを必死に行おうとしているのに対し、フォルクスワーゲンは総合的に全方位で車を進化させようという姿勢がうかがえる。これは、大衆車からスポーツカー、高級車までてがける、総合自動車メーカーだからこそできる技というか、それこそがフォルクスワーゲンの味である。
これまで乗ったBセグメントの中で、最も印象が良かったのは、スズキの新型スイフトであった。今回ポロに乗って、正直どちらが好きかと言われたら迷う。どちらともハンドリングは絶品、スイフトには軽い車特有の楽しさがあるし、ポロはスイフトよりは重いけれども、身のこなしは軽々としている。エンジンは出だしのトルク感ではポロが勝っているが、回した時の楽しさはスイフト。ユーティリティーはどっちもどっちで、スタビリティは若干ポロが優位。内装の見た目はフォルクスワーゲンの方がいいが、最新型のスズキのほうが、ボタンのクリック感や、レバーを操作した時の高級感がよく出ている。それでもどちらか一つを選べと言われれば、個人的にはスイフトかなと思う。低速域での乗り心地では、スイフトの方が重厚感があるし、かつ高速域でもフォルクスワーゲンに匹敵するくらいレベルが高い。スポーツモデルではない、標準モデルでMTを選べると言うのはスイフトの魅力である。また、ツーペダルのモデルでも、5速AGSを搭載したハイブリッドが、スイフトでは選べると言うのは大きな魅力である。ただ、ポロもそろそろモデルチェンジの時期だと思う。ゴルフに始まり、常に世界のハッチバックのベンチマークを作り続けてきたフォルクスワーゲンが、一体どんなBセグメントを出してくるのか、期待は大いに膨らむところだ。

今回燃費:18.5km/L走行距離454km 給油量24.6L


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https://www.youtube.com/watch?v=7PIis_2I_E8&index=100&list=PLw0Odm5d5QLYSGkODlZom00J37El1FU-t

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