マツダ・CX-5 試乗レビュー









エンジンは先代モデルと比較すると、若干ではあるが静かになった。もともと静かだったので、ディーゼルだからといって気になる人はほとんどいないのではないかと思われる。とはいえ、以前乗ったプジョーでは、巡行程度のスピードであれば、エンジン音が一切侵入してこなかったということを考えれば、あと一歩だと思ってしまう。本当に、人間の欲望というものは、際限がないと思い知らされる。高回転まで回した時は、アメリカのV8エンジンのような、野太い音が聞こえてくるが、運転好きにはむしろたまらないだろう。振動については車体には響かないものの、比較的強い加速をした場合、エンジン振動なのか、トルクステアの一種なのかわからないが、ハンドルがビリビリと言っていたので、プレミアム路線をマツダが狙っているとするなら、ここは改善した方が良いだろう。低回転からトルクがぐんと立ち上がり、それでいて5500回転までトルク落ちすることもなく、きちんと回る、マツダの2.2リッターディーゼルは、先代モデルに搭載されていた時から好きなエンジンではあったが、その特性はきちんと受け継がれており、ターボラグも、アイドリングストップ復帰直後以外は、ほとんど感じることもなく、気持ちの良さは健在であった。振動や騒音といったマナーは、プジョーのディーゼルに負けてしまったとは思うが、こんなに軽く、高回転まで吹け上がってしまうディーゼルは他にはない。ただ単に楽しいだけではなく、下り坂でエンジンブレーキを使う時などは、とても頼りになる。
マツダ内製の、6速トルクコンバータ式オートマチックについては、先代のモデルにおいて、最も大きな弱点であると感じた点でであった。先代モデルをレビューした際、私は、マナーの良さに起因するプレミアム感と、ダイレクト感に起因するドライバビリティーを生みだすため、トルクコンバータ式であれば、8段は必要だと感じた。ところが、いざ新型が発表されて見ると、パワートレインもドライブトレインも、特に大きな変更はなく、変速機も6速のままで、心底がっかりしてしまった記憶がある。したがって、この点に関しては、あまり期待せずに乗ったわけだが、ところがどうして、以前のモデルよりも、格段にレベルが向上しているではないか。先代モデルでは、ロックアップ領域が大きいと謳われていた割には、ダイレクト感に乏しい印象を受けたのだが、今回の新型では、変速した時の節度感が増しており、しかも変速のスピードも早くなっていた。感覚としては、トルクコンバータ式というよりも、ちょっと半クラッチ領域の多い、デュアルクラッチのようなフィーリングだった。かといって、パーシャル領域までであれば、変速時のショックが大きいわけではなく、チューニングもうまいことできていると感心した。エンジンブレーキ使用時も、許容回転数が非常に高いことに助けられ、6段でも実用的なエンジンブレーキを効かせることができる。ただ、それでもやっぱり私は、8段あたりまで増やせば、もっと自由度が増すのになと考えてしまう。ここまでのレベルに仕上げたところなので、心苦しいとは思うのだが、マツダは一旦、変速機の内製化を再検討し、アイシンAWや、ゲトラグあたりの変速機を搭載した車両の試験でもやって見て欲しい。
アイドリングストップについては、先日乗った、プジョーの1.6リッターディーゼルと比べてしまうと、どうしても、再始動時にブルンと揺れるし、始動直後のターボラグがきになる。しかし、それでも一般的な乗用車と比較すると、静かで振動は少なく、再始動も早い。つまりはプジョーが良すぎるのだ。
乗り心地については、先代モデルと比較すると、ドイツの車のような、かっちりとした雰囲気が増している。ロードノイズ、風切り音ともに少なく、高速走行中は、ラクシュリーな雰囲気が漂っている。一方で、大きな突き上げがあった際に、内臓に響くような、ドシッとした動きが見られることもあった。この車は19インチのホイールを履いていたため、もう少しエアボリュームの厚いタイヤであれば、それは少し軽減されるのかもしれない。こまかいコツコツとした突き上げに関しては、いなし方がとてもうまく、振動はすぐに収まり、ボディーはカチッとしている。先代モデルでは、雄大で、スケールの大きい、しなやかな乗り心地が実現されていた一方で、いつまでもフワフワとボディーが落ち着かず、ルーズだとさえ感じることがあったのだが、今回はかなり味付けを変えて来たなと思う。
ハンドリングに関しても、やはりドイツ車寄りになった。切り出した瞬間から、ステアリングには、まるで地面を素手で探っているかのような、まさに手に取るようなフィーリングで、車の状態をとてもよく把握しやすい。また、Gベクタリングコントロールによって、遠心力もある程度低減されるため、地面に吸い付くようにコーナーを曲がって行き、早いスピードで曲がったとしても。同乗者をあまり不快にはさせない。セルフアライニングトルクの大きさもちょうどよく、ハンドルセンターも、重心の高いSUVとしては、充分定まっている方だ。19インチタイヤの強力なバイト感も手伝って、あまりにもよく曲がってしまうため、途中から、SUVに乗っているのではなく、スポーツカーに乗っているのではないかと、疑ってしまうほどだ。強いていうなら、曲がっている途中で、大きなアンジュレーションを受け止めた際は、姿勢変化が大きくなってしまい、バネ上がグラグラと動いてしまう。その時はさすがに、重心の高さを感じてしまうことにはなるが、現状、SUVでここまでできれば、もう充分だろうと思う。そこまでハイレベルなものを求めるのなら、アクセラやアテンザを買えば満足できるはず。
スタビリティーについては、こちらも先代と比較すると格段によくなっている。直進安定性が高く、ヨーロッパの速度域の高い道路での使用が念頭に置かれているということがわかる。日本の高速道路で、100キロまでしか出せないというのが、むしろかわいそうだと感じてしまうくらい、スピードが上がっても不安感は一切感じない。今まで乗った国産SUVの中では、最も安定感が高い車だと感じた。

ぶっちゃけてしまうと、私は、SUVがあまり好きではない。見た目はかっこいいかもしれないが、本当に運転が楽しいのは、セダンやハッチバック、あるいはクーペのような、重心の低い車だと考えているし、今までその考えを覆させてくれる車に出会ったことはない。しかし、その中にあっても、新型のCX-5は、とてもドライバビリティが高く、運転していて素直に楽しいと感じる車だったし、これなら見た目に惹かれて購入したとしても、がっかりしてしまう人はほとんどいないように感じる。また、私の評価ではいつも無視してしまいがちではあるが、安全装備も充実しているし、クルーズコントロールに関しても、今まで乗ったどの車よりも直感的に操作ができた。CX-5のデザインが好きだから買いたい言う人には、車好き、運転好きだと言う人にも、そうでないという人にも、自信を持ってお勧めしたい。一方で、旧型のCX-5に乗っている人は、買い換えた方が良いのかと言われると、微妙なところ。確かにかなり進化したとは言えるが、先代モデルは先代モデルで、非常に優秀な車であるし、先代よりもレベルの低いSUVなんて、現行モデルにもたくさんある。これもやはりデザインが気に入ったのであれば、旧型オーナーが、新型を買うことについては、全く問題ないとは思うが、一旦冷静になって、自分の家のガレージを見て欲しい。そこにある車に対して未だに愛着と、色褪せない美しさを感じるのであれば、わざわざ買い換える必要なんてない。

走行距離:268.1km 給油量:21.42L 今回燃費:12.5km/L

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